Monday, April 30, 2018

『クライマー魂』を読みましょう

最初のパートナーは、自信過剰すぎて、三つ峠3Pに2時間半もかかっているのに、北岳バットレス四尾根に行くと言って、師匠や会長が、二人では無理と言っても、聞く耳持たなかったので、パートナーは解消した。

その後、大学生の後輩ができた。私はすでにアルパインをしていると思って、アイスのルートに連れて行ってしまった…ので、そのあとに先輩の務めとして、技術的なことは全部教えた。レスキューも共有していないとどこにも行けないので、それすら。

で、最初の男性パートナーで苦い経験があったので、この本を貸し出した。


この本には、山岳同志会で、どのように新人が育てられるか、こと細かく描いてあるので、自分がどのようなプロセスをたどって成長するべきか?ということが、分かるようになっている。

現代の山ヤは、登れても敗退の技ができていない、というようなアンバランスな成長をしている人が多い…のは、先輩が無責任体質だからだ。山をするうえで必要なことを教えていない。

後輩は仕方ないから、登攀だけを頑張る…

…結果、登れても、下れない山ヤが増える。レスキュー技術ゼロで、みな本チャンに行ったりもしている。つまり、何かあればアウトってことだ。

私が思うに、北岳バットレス四尾根は、ロープが出る山を今年始めた人が、3年後の目標とするには良い。

遠くの目標がないと、今何をするべきなのか?が明白にならないからだ。

・三つ峠に通って20Pくらいを楽々こなせるようになる
・岩場のルートファインディング(弱点)を突けるようになる(それに必要なのは、フリーではないのは明白でしょう、フリーは強点を登るもの)
・ハーケン打ちに慣れておく
・ピンチの際の、リングボルト打ちなどを体験しておく
・レスキュー技術を共有する(リーダーレスキューまで)
・前座で、北岳夏山登山道は終わっておく
・ついでに池山吊り尾根も終わっておく
・近郊のゲレンデ的マルチピッチ(小川山の烏帽子岩、乾徳旗立)などを終わっておく
・テント泊縦走などで互いの生活技術を摺合せしておく

これだけでも、だいぶ、お腹いっぱいでしょう。ルートファインディング力などはつけるのに時間がかかります。

こういうプロセスを得ないで、ただ先輩の後ろをついて登っただけの本ちゃんだと、退屈なこと極まりなくなります。

ついていく=冒険性ゼロです。



Monday, April 23, 2018

蛮勇vs地頭力

山の世界では、蛮勇がもてはやされる…これは山の本の影響。

勇気は大事だが、蛮勇である必要はない。

蛮勇とは、今風に言えば、イケイケってこと。

むしろ、山に必要なのは、地頭力、だ。

リスクを、とことん考えて、現実的に、どうしたらリスク回避できるか?を考えつくす力のこと。

例えば、アイスリードが課題だとしよう。

その時、自分に必要なのは何か? 

いくら易しい三級アイスでも、もろいアイスは、適さない。仮に敗退が起こった時に、アイススクリューを残置したくなければ、アバラコフを作れる技術が必要だ。アバラコフを作るには、最低20cmくらいの厚みの氷は必要だ。

などなど、お尻から考えて、今何が必要か?が分かる。

そういう、リスクを因数分解する思考能力のほうが、よく考えもせずに、勇気だけで取りつく、蛮勇よりも重要。

リスクを因数分解する能力=地頭力。

死なないために山ヤは、地頭力を鍛えましょう。

5.11がRPできないと登れない5.10b? 経験者の同行が必要とされる訳

”日本での”、岩登りは、非常に危険だ。

というのは、

”5.11がRPできないと登れない5.10b”
とか、

”5.10bのムーブが出てくる5.9”
とか(笑)。

一般的な常識からすると、

「じゃ、素直に5.11でいいのでは?」

とか、

「素直に5.10bでいいのでは?」

と思ってしまう。

平たく言えば、グレード感が統一されていない。

グレードは初登した人がつけるので、その人の意思を尊重されて、そのグレードになっているわけだ。

だが、

グレードは何のためにあるか?

という本質を考えると、

怪我を防いで、安全に楽しむため。

である。登れるスキルの目安が必要だ、というのがグレードの意味である。11しか登れない人が、12に取り付いたら落ちてしまうのは当然なので。

今のグレーディングの現状だと、真逆になっている。

そのため、そこの岩場をよく知っている人に、あらかじめベータと言われる情報を貰って、正確な情報を貰ってからでないと、トポの情報だけで行くのは、とても危険、ということになっている。

特にクライミングを始めて間がない人は、このような事情自体を知らないだろうことが多いので、特にそうだ。

そのため、

この道の先導者

が必要と言うことになっており、それが、

”経験者の同行が必要”

ということの意味になっている。

Tuesday, April 17, 2018

怖いvs怖くない 初心者経験者対決

初心者のころは、はっきり言って、ロープシステムを理解していないので、無知がゆえに怖くない(笑)

       初心者vs 理解者
ランナウト    怖くない 怖い
トラバース    怖くない 怖い
1ピン目遠い   怖くない 怖い
ハンギングビレイ 怖い   怖くない
セルフなし    怖くない 怖い
ロープをまたぐ  怖くない 怖い
スリングで伸ばす 怖い   怖くない
ロープがこすれる 怖くない 怖い
ゼロピン目なし  怖くない 怖い
被り       怖い   怖くない


自分も含めてだが、初心者のころの登攀ってホント怖いよな~と思う。ハーネスもつけずセルフもつけないで、岩の上の際から10cmのところに登山者は平気で立つ。高所恐怖症を公言する夫ですらそう…

でも、確実な支点と繋がっていないで、よくやるな~とクライマーならだれでも思う。

私は支点では必ず自分で支点にずーっと安定的にテンションしたまま、ビレイしている。あるとき、後輩に、”こんなところで、支点にぶら下がって空中に露出しているなんて、勇気ありますね!”と褒められて(?)、ガックシ… 君だって、同じ支点に守ってもらっているんだよ~。ビレイヤーのセルフは最後の砦。

リードにはリードの技術があり、ダブルのロープなどやっぱりよく考えて登らないと交差したりもして、気を遣う。

セカンドでも、よく考えてくれる人だと、ロープのたるみは最小限で、余った部分をたるませず、ビレイしてくれるので、落ちても何とかはなるだろう…が、ランナウトした岩場で落ちると、その後が厄介だ…。宙づり登り返し技術、ビレイヤーの脱出、リードクライマーの救出法くらいは知っていてほしいかも?捨て縄とか、ムンターミュール用のスリングなど、ちゃんと持ってきてほしいかも?

トラバースは、登山者のころはしょっちゅう登山道でトラバースばかりしているので、その延長の感覚があり、怖くないですが、クライミングしていると、何が安心って直上が一番安心です。トラバース、=振られる。

被りは、真逆で、初心者時代は超怖いが、フリーだったら、かぶっていないと落ちれない。かぶっていれば、落ちても空中。スラブで落ちたら、大根おろしなので、スラブこそ怖い。同じことで、テラスやバンドが出てくると、またグランドするところが出てきたということで、用心する対象が増える。その場所から1ピン目ではやっぱり落ちれない。落ちたらグランドと同じことだからだ。

とまぁ、初心者時時代にほっとするところと、ロープシステムを理解してからほっとするところでは、かなり違う。

やっぱり確実な支点というのが、心のよりどころとなってしまう、今日この頃…ハーケンなんて信頼はできない。リングボルトはもっと信じられない。

でも、この恐怖心は、成長と引き換えの恐怖心なのだ…はぁ。

何も怖くなかったころの、無垢な自分が懐かしい…

三つ峠は初心者ゼロで行って、2回目からリードしていたが、それがいかに危険行為であったかを理解して、驚愕した…(笑)登攀自体は易しいので、何も怖くなかった。

Thursday, April 12, 2018

リード登りvsフォロー登り

■アルパイン登りvsフリー登り  

アルパインでの、リードはザイルを伸ばしていく…という活動で、実際、登っていると、とても時間がかかります。

それは落ちると、死や怪我に関わるから。

特にアルパインではそうで、ビレイがあっても決して落ちてはいけないと教わります。(のため、落ちない程度のところしか、逆に言えば行けません)


フリーの場合は、上手になるためには墜落も含め、できないことをできるようになる、という活動をしないといけない。

頻繁に墜落します。つまり、落ちます。

これは、なかなか切り替えが難しい活動です。

■ セカンドはさっさと登る

一方、アルパインでもフリーでも、マルチではセカンドはさっさと登る、です。

リードは危険が大きいから、時間をかけても許されますが、セカンドだったら、とにかく早く登ってきてくれないと。

セカンドなのに、フリーにこだわって登る必要はないです。

(でも、へたにエイドするより、フリーで登るほうが、どんな場合も素早く登れます。フリーにこだわるというのは、ロープに頼らない、という意味です)

■ トップロープが長いクライマー

トップロープばかりの期間が長いと、リスク管理がおろそかなクライミングが身に付きます。

というのはロープに守られて、今、おちたらどうなるか?という思考をしなくなるから。

つまり、クライミングが大胆だ、ということです。

■ リードは繊細な登り

リード登りは、逆に言えば、大胆ではないクライミング、になります。

つまり、実力が10の力だと仮定しましょう。

トップロープなら12の力が出せても、リードだと8の力しか出せません。

”落ちるリスク”が高いからです。

■ リード経験の積み上げ

なので、大事なことは、低いグレードを登っている時代から

 リスク管理 & 登攀の実力 & スピード

の3つの力をバランスよく育てていくこと。

5.8と登攀が易しくても、落ちたらマズイ場所にある課題は多いです。

■ 実例

私が、兜岩でリードした5.8は、翌年は、1ピン目のボルトが増えていました。

つまり、リスク管理力も、5.8しか登れない頃は、クライミング自体が初心者のため、比較的低い、ということ。

誰かが落ちたのでしょう。

■ セカンド専門クライマーの欠陥

セカンド専門クライマーの欠陥は、

リスク管理不在、

ということです。

これは、肝心の、扇のかなめ、のところが欠けていることになり、自立したクライミングには、それだけ成長しても、結びつきません。

一方、登攀力が低くても、リスク管理とセットで成長していけば、小さな山でも、少しづつ、積み上げて登ることができます。

実際、山というのは、リスク管理が楽しみの一部とでもいえるもの、なので、セカンドだけ、というのは、楽しみの一面しか知らない、というのとも、同じ意味になります。

自分のエゴのために、後輩にセカンドしかさせないクライマーもいるほどだからです。

大事なことは、

リスク管理、登攀力、スピード、

全部をバランスよく育てていくことで、特定の課題の特定のムーブが、たったの1度だけこなせたら、5.12登れました、というのでは…。

クライミングは、課題により、損と得があるので、自分に合った、どこかの一課題だけでそれを実現しようとしている人は、けっこう多く、そして、それはあまり難しいことではないように、思います。特に若い間に、パワーだけで解決する、というのはありがちです。

■ 安定性

しかし、クライミングでむしろ大事なのは、安定性、です。

安定性とは、悪い時も良い時も登れるグレードという意味です。

安定していないと、リードで取りつくときに、やはりリスクが大きくなるためです。

リードで取りつくときの安定性、というのは、疲れていても、一本目でも、ということです。


Thursday, April 5, 2018

登山の恩恵 今ここ

登山というか、クライミングなのですが、クライミングは圧倒的に困難なので、

今ここ

以外考えるゆとりゼロです(笑)。

ヨガの、Be Here Now を圧倒的に実践できます(笑)。

沢登りでの滝の登攀とかも同じ。本チャンクライミングも同じ。クラックも同じかなぁ…

とにかく、今ここ、をクリアしないと、次の瞬間は命がないです(笑)。

しかし、それを考えると、佐藤さんのスーパー赤蜘蛛フリーソロとか、アレックス君のエルキャピタンフリーソロとか、信じられない集中力です。同じ人間とは思えないなー。

ちなみに、肉体的な命がけではなく、社会的な面での命がけは、外国暮らしだと思います(笑)。

自分にも、こんなにも、内なるパワーがあったことを発見するなら、両方、お勧め。

Tuesday, April 3, 2018

道しか歩いていないと、道がないと歩けなくなる

先日、バイト先で、肉に包丁を入れている姿を見て、上手だなぁ…と思い、筋肉に沿って包丁を入れるのか聞いたら、その通りで、慣れていれば、肉のほうから包丁が入る先を導いてくれるそうだった。やっぱり。

山も一緒だ。尾根と谷が読めるようになると、山のほうが、こっちですよ、と言ってくる。特に尾根はそうです。細い尾根(=険しい尾根)ほど、歩くべきところは限定されます。逆に、広い尾根(=安全な尾根)は、幅が広く、どこでも歩けてしまえるため、どこを歩くべきかというのは分かりにくいものです。

そういえば、瑞牆山で、「どこを歩いたらいいんですか?」とおばちゃん登山者に聞かれたなぁ… 岩ゴロゴロの道ですが、どこを歩いてもいいのです。

道しか歩いていないと道がないと歩けない、と思い込んでします。

山と同じで、人生のほうが、こっちだよ、という道を行けばいいんですよね。

Monday, April 2, 2018

私の提案したい山


■ リスク中心主義



私は山のスタンプラリーや、自己顕示欲の山は嫌いです。また、特にリスクが何か?を自分で考えない山、リスク補填を自分でやらないことが前提のガイド登山は嫌いです。


登山とは、”山は危険なところである”という前提から入ります。

これが、下界との最も大きな差です。下界の前提は、”安全である”、です。


ですから、登山では、危険が何か?ということさえ、押さえていれば、ほぼ99%、大丈夫です。何を中心に考えるか?リスクです。

■ リスクをマスクした後、どうするか?

しかし、リスクを中心に考えて、リスクを避け、リスクがない部分では、距離や高度差、体力的な難易度、あるいは登攀的な難易度を上げる、というやり方では、早晩、彩りに欠けることになります。

守り:リスク中心に考える
攻め:どんどんと課題を困難化する

そこで、多くの人は、山での美食に傾きます。日本の山はサイズ的に小さいので、アルパインで鍛えた、多くの山男さんに担ぎ上げられない美食はないです(笑)。黄連谷にカニを担ぎ上げていらっしゃいます(笑)。

美食に走らない人は、美女に走る? 中高年登山では、昔歩いたルート自慢が盛んです。往年の美女が寄ってきてくれるようです。第二の青春を謳歌するのも悪くはないと思います。(と言っても、四尾根程度を自慢されたってねー。ガッシャブルム2峰とかなら、なびかないでもないが)。しかし、山のすごさで競うのは、やはり自己顕示欲の山です。






■ 楽しさを自分自身で定義し、創造する楽しみがあるのが山です






さて、美食にも美女にも走らないとすれば?何に走ればいいのか?


山は自己満足。


山の価値は、自分の満足の深さで測るという意味です。藪山に心が燃える人もいれば、岩場の陰にひっそりと咲く花を追いかけることに喜びを見出す人もいます。たのしさというのは、千差万別。

ただ、やっぱり、一つのピークを登っておしまい、という山は、平板だと思います。その山の何を知ったことにもならない。






■ 例えば 乾徳山






例えば、山梨の山で、乾徳山というのがありますが…これは、縦走もできれば、奥秩父の前座で破線ルートでもあり、プチアルパインの入門ルートである旗立岩中央岩稜もあり、ボルダーもできれば、実はトレランでも有名です。


 


ふもとには有名な恵林寺があり、座禅を組んでの瞑想ができ、日本庭園を散策できますし、ワイナリーなら、山梨の良心と言われている幾山が近いです。






春、夏、秋、冬、すべて通うことができます。まぁ、あまり冬に行く人はいないですが、春は、たらのめと蕨が、取り放題。山菜取りの山としても使えます。かつては牧場、ということです。






という具合に






文化的・民俗的軸

登山の体系的軸

時間軸

用途軸






と多面的に山を味わうというのが大事なことだと思います。私自身の山はそういう山です。






スタンプラリーにしてしまうと、達成感だけが山のご褒美になってしまい、それでは、山という活動の中で、多くの”充実感”を得ることができないのではないか?と思います。





Sunday, April 1, 2018

ロイヤリティの発揮先 

山岳会など、およそ”会”と名のつくものを作った場合、日本人は、会の理念ではなく、組織の存続そのもの、を優先しがちだ。

これは逆説的だが、組織の弱体化を招く。間違った道だ。

現在の山岳会の多くでは、年功序列が根強い。どんなに間違ったことを言っていても、会歴が長い方を守る、という不文律がある。会歴が長い=年齢が高い、に、必然的に収まる。

つまり、会社と同じで、”組織へのロイヤリティ” を求められている。

が、本質的に、ロイヤリティを求められている先は、

   ”山”という自然の摂理

だ。山では、山という自然の掟に従うことを行動指針とし、山に対してロイヤリティを発揮すべきだ。

これを犯したとき、山での遭難が待っている。

年を取っていても判断力に劣る人もいるし、若くても判断力の優れた人はいる。体力もそうだ。

という当たり前のことを学ぶ場が山だ。