Tuesday, January 2, 2018

仮説思考

■ 必要とされているのは自立ではなく、仮説思考

山小屋バイト中よくあった言葉。私にも登れるんでしょうか?という言葉。

こういうことをいう人には、山は徹底的に向いていない。

私はこういうことを言う人は、依存的な人だと思っていた。その人が登れるかどうかなんて、こちらには判断する材料が何もない。

しかし、依存的な人なのではなく、仮説思考ができない人、なのだと気が付いた。

■ 仮説思考の仕方

一般登山にも、アルパインクライミングにも、

  自分が登れるかどうか?という問い

に対して、


  仮説思考

が必要だ。だが、今の義務教育は、答えの暗記が得意な人ほど高得点を取る仕組みになっているため、ほとんどの人は、この山に自分が登れるかどうかについて、解決案を出す方法を知らない。つまり、仮説思考で考えられない。

一般登山の場合、標高差と距離、つまり、山の大きさ、で、自分が登れるかどうかは、おおよそ知ることができ、そこから難易度、岩という要素があるかどうか、天候、季節、という要素を加えていくことで、おおよそ正しい予測ができる。

例えば、最初に3時間程度のハイキングの山に行って、自分の脚力をチェックする。3時間で足がガクガクいうようなら、6時間の山なんて無理だということは自明だろう。

岩の要素があれば、岩場が少しある山に行って、同じように試してみる。

季節を変えれば、同じように短時間のところから試してみる。

天候も同じだ。雨の山は悪くない。しかし、3時間の雨の山と10時間も雨にあたり続ける山では違うのは自明だろう。

新しい条件が加わるときは、常にその経験は データ取り だ。

■ アルパインクライミングへのステップ

この一般登山で培った仮説思考があまり役立たないのが、アルパインクライミングだ。

一気に仮説の前提が崩れるからだ。

例えば、一般登山では、私は歩き1時間標高差440mくらい登れる。が、そういうデータは、まったくアルパインでは役立たたない。岩登りは異様に時間がかかる。したがって、新しいデータが必要になる。

■ 経験者同行のこと、とされているルート

登山体系や赤本を見ても、

 経験者と同行のこと

と条件づけられるルートが多数出ており、それらは初心者向きのことが多い。

このセリフの理由は、登る本人がもっている仮説が、おそらく間違っている、という可能性が大きいルートですよ、という意味だ。

一般に、アルパインクライミング入門者は、一般登山者時代に培った経験値をアルパインに適用しようとしており、難しい山を楽勝だと思っていたり、楽勝の山をひときわ難しく考えていたりする。

例えば、ロープが出る山が初年度で三つ峠3Pで2時間半かかっているのに、北岳バットレス四尾根は無謀だということが分からない。

 山には順番がある 

と言われるのは、この仮説を正しく身に着けるためだ。

赤本に乗っているようなルートは、いわばトップロープクライミングのようなもの、それらで培ったデータで適切な仮説をもって、本番の山、つまり未踏の場所に出かけていくためにあるのだ。

経験者は経験があるだけに、仮説が的を得ている、というか、すでに仮説ではなくなっている、ということ。

余談だが、もし身近に要る人が間違った仮説を立てて、山に登ろうとしていたら、教えてあげるのが、山ヤの友情というものだ。

山ヤになりたい人は、正しく仮説思考を身につけなくてはならない。

いわゆる、わかっていないことが分かっていないという段階というのは、仮説思考の仮説が大幅に間違っている、ずれている状態ということです。

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