Tuesday, October 6, 2015

見極める ・・・山岳会を考える その4

この記事は、前の記事の続きです。

さて、山岳会が高齢化して、一般登山しかしなくなるという現象は、人間の生理現象として普通だと言う話。

嘆かれているのは、

 先輩が後輩を無償で指導するという昔ながらのシステムが風前の灯火

であること。しかし、高齢化しても、別にロープワークも、スタカット(リードフォロー)も教えられる。したがって高齢化は教えないことの理由にはならない。

■ 水平方向の劣化

これは2方向から、劣化が進んでいる。

 教わる人の劣化
 教える人の劣化

教える人には教える内容に自信がなく、教わる人は教えても教わる気がない。

・・・となれば、いくら無料でも、中身は何もなくなる。これは水平レベルで起こることだ。こうしたことが起っているかどうかのインディケーターは、

 新人がずっと新人のままかどうか (誰かを連れて行く側に回っていない)

で分かる。

■ 垂直レベル

山と言うのは、ただ単純に自分だけで山へ行っていても、メンバーとしての参加でも、分かることはたくさんあり、高度化していくものだ。

ヤマレコなどで記録を書いている人たちはどんどん、山が高度化して行き、そこらへんの山岳会メンバーなどそこのけ!という健脚者が大勢いる。したがって、山岳会のメンバーとして、ついて行くだけでも相当の経験の蓄積にはなるはずだ。

経験や体力が蓄積したかどうか?は、どうやって分かるだろうか?それは、

 山が高度化していっているかいないか?

が直接のインディケーターになる。ずーっと同じレベルの山に行っていれば、全然、高度化していない。

■ アクセルとブレーキ 

当然だが、高度化するスピード(アクセル)と、劣化するスピード(ブレーキ)が一緒だと、ぜんぜん進化して行かない。

分かりやすい例でいうと、新人さんの流入は、ブレーキになる。最初の顔合わせ的な山行は、ある程度、安全マージンにゆとりがある、易しいところでしかスタートできないからだ。いきなりチャレンジ山行はない。新人が入れば、まずは赤岳程度の山で体力を見て、その人のスキルレベルや体力の度合い、何が得意かなどをチェックしないといけない。

アクセル(山が高度化する要因) 普通登り続ければほっといても徐々に高度化する
 ・慣れ
 ・体力がつく
 ・技術が付く
 ・自信
 ・山が分かるようになる

ブレーキ 山に頻繁に行かないとすぐに弱くなる
 ・新人の流入
 ・山への飽き
 ・体力の喪失
 ・技術の錆びつき
 ・過信
 ・山を舐める

新人の流入は、とりあえずブレーキにしたが、新人さんには個人によって差があり、中途採用と同じで即戦力な人もいれば、ある程度教育がないと使えない人もいる。

期待値的には、一年程度で独り立ち、が出来不出来の分かれ目になる。(独り立ちと言うのは、自分で人を連れて、易しいゲレンデ程度へ行け、基本のスタカット、リードフォローシステムを教えることができること)

アクセルとブレーキが均衡していれば、当然だが前には進まない。

登山は特に何もしなくても山に行きつづければ、高度化して行くものなので、高度化しないで、同じレベルにとどまっていれば、なんらかのブレーキが働いている、と推測できる。

そのブレーキの要因は何か?ということが次には問題になるが・・・原因は、どれも会の内部的なもので、新しく入った人にその責任はない。

■ インデックス・・・内部をうかがう指標

例えば、太っていると、生活習慣病のリスクがあるのは誰でも知っている。生活習慣病は目に見えないが、太っているということは目に見える。この場合、太っているということは、生活習慣病の疑いを示唆するインデックスとなる、と言える。

同じように山岳会と言う組織がどのような状態にあるか?という見えないことが、垣間見れるインデックスがいくつかあると思われる。

 ・飲んでいる人と担いでいる人が違う → 新人だった場合、新人は単純な酒担ぎ要員
 ・同じ人ばかりが運転している     → 同じく、新人は単純な運転要員

これらのことから、ギブ&テイクは、”時差を伴った技術”のギブ&テイクではなくなっていることが分かる。技術はギブ&テイクされていない。

技術がギブ&テイクされているのでなければ、何がされているのか?利便だ。

新人の側は自らルートを調べる手間を省く、道案内役として、先輩を利用しているのであり、先輩の側は自ら担ぐべき荷を担がずに済ませると言う、手抜きの為に利用しているということになる。

しかも〇〇へ行くのに必要な技術トレーニングはないとしたら・・・、”行ってやる”とはいうのの・・・どちらかというと、連れて行ってもらっているのは、担いでもらい、運転してもらっている側・・・つまり先輩の側だ。

双方が手抜きを求めて連帯すれば、これは山ヤ的に成長する、ということの逆行を意味する。つまり、退化する方向性に力が働いていることになる。

一般に一度つるんだ先輩後輩は、次がある。普通一回目は、お試しだからだ。その先がないということから分かるのは、山が進化する方向にはなかったと言うことだ。普通は、どんな山ヤだって、もっと上の山に行きたいのだからして。

≪見極めインデックス≫

 ・新人が酒担ぎ要員にされていないか?

 ・同じ人ばかりが運転していないか?

 ・手抜き山行を成立させる力学になっていないか?
 
■ その他のインデックス

というわけで、水平レベルでも垂直レベルでも、力学的に技術伝承は行われない。メカニズム的に不可能になっている。

それどころか、山行頻度が下がれば、アクセルがどんどん重くなっていく。

体力は山に最低2週間に一回程度は行っていないと下がる。

山にめったに行かない人が高度な山にいきなり行くと、危険だと言うことは、誰が見ても分かるが、なまじプライドがあるだけに、それが許されると考えがちな点もリスクに加算される。

だから、誰がどのような頻度で山に行っているか?は非常に重要な情報だ。

特に教えてくれることが可能な先輩クラスの人がどれくらいの頻度で山に行っているかは重要で、いくら昔取った杵柄があっても、3か月も歩いていない人であればすぐにへばってしまう。

しかも、それは、どのような要因に因るのか?と言うと、内的に腐敗した(山に倦んだり、体力が衰えたり)ためであり、新しく入った人には関係がない話だ。

≪その他の見極めインデックス≫

 ・指導的立場の人がどれくらいの頻度で山に行っているか

 ・間を空けて、大きすぎる山に行っていないか

 ・大きい山の前に小さい山があるか(足慣らし)

■ 資産か負債か?

例えば、家や土地を持っていても、それが辺鄙で不便な場所にあり、手入れもされていなければ、活用もされていなければ、資産ではなく負債だ。

山岳会も同じようなことが言える。 一緒に行った方が危険が大きければ負債だ。

≪インデックス≫

 ・山が年々高度化して行っているか(10年前より今の方がすごい山に行っているか)
 
 ・年単位で、新人が育っているか(一人の人をチェックする)

 ・その山岳会ならではの山行があるか?

 ・宴会比率

 ・トレーニング比率

 ・入会者が来た時に教えるべきことが教えられているか?

 ・例会に、議題がきちんとあり、ただの雑談会になっていないか

 ・行きたい山を言うと、「もう行った」(つまり、”もう行かない”と言う意味)と返されるかどうか


全く指標にならないのは、過去の山。過去の山と今の山との対比が重要で、

 過去より今の山のレベルが下がっていれば 下降傾向
 過去より今の山のレベルが上がっていれば、上昇傾向

株価のチェックと同じことをしなくてはいけない。山岳会の低落状況は、株価でいえば、単なる市況であって、そのものの状態を表すとか限らない。悪い市況にあっても、株価を伸ばす会社はいるものだからだ。

どこの山へ行っているかよりも、どのような流れにあるか?のほうが重要なのだ。







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