Sunday, September 13, 2015

明神主稜

■ ご縁

明神岳主稜から帰ってきました!

明神は、登山を始めてすぐに行った上高地の散策で、現地の自然ガイドに「明神は登山道がなく、明神に行く人がいればすごい人」と教わった場所でした。

その当時・・・2010年の11月ごろ・・・は、わたしと夫は上高地を散策する、観光客でした。登山の世界は知らず、行ったことがある自然景観の似ている場所として、ヨセミテと上高地を重ねていました。

昔の人は今のように上高地に入るのに沢渡があったわけではなく、新島々から徳本峠で入ったのだそうですが、明神岳が、穂高岳連峰への登路だったのだそうです。それを教わったのも、その時です。それ以来、わたしには、明神は登るべき山となっていました。

考えてみれば、その時の自然ガイドさんが言った”すごい人”の”すごい”は、”あなたたちにとっては雲の上のことですよ”という意味でした。

5年前、”雲の上”として示された山が、雲の上ではなく、現実に手の届く場所になってうれしいです。

■ 行くことになった経緯




ここに行くことになったのは、先日三つ峠の練習会にお誘いした方が、単独行で計画されていたからです。お誘いいただいた山行に、急遽、便乗した格好です。

去年、前穂北尾根に行った時に、私にも歩けそうなルートとして、明神岳東稜はインプットしてありました。それで今年の夏は、明神岳東稜か北穂東稜へ行きたいと思っていたのです。でも相変わらずのパートナー貧乏・・・。いっしょに行ける信頼がおけるパートナーがいない。

今回は、にわかごしらえのパーティでしたが、互いのスキルマッチングは、数日前の三つ峠練習会とフリーの練習会で確認済みですし、単独行で行く計画への便乗ですから、そう難しいわけがない、という訳です。同行者とは、ちゃんとした山を一緒に歩く、最初の山と言うことになりました。

一発目からテント泊で穂高というのは大きすぎるかな、とも思いましたが、クライミングをしてみて、過信のない慎重な性格が分かったので、大丈夫だと考えました。スキルも大体同じくらい。体力はもちろん男性なので、向こうが勝ちそうでしたが・・・。

明神岳主稜は、明神岳東稜と比較しても、一人で歩く人もいるくらいですから、バリエーションルートとしては、バリエーション0.5というくらいな位置づけで、その意味でいうと、決して”すごい”わけではありません。

計画は、前夜泊テント泊一泊二日で、明神ー前穂ー奥穂ージャンダルムー天狗のコルー岳沢 でした。

■ 短縮コースに

ただ二日目が朝から雨の予報でした。つまり今日です。

そこで、雨を避ける案

・準回り 上高地 - 明神 - 前穂 - 岳沢小屋 - 上高地 (岳沢泊)
・逆回り 上高地 -岳沢小屋 -前穂 - 明神 - 上高地 (5峰台地泊)

を考え、逆回りで登ってきました。逆回りだと、2峰の登りが核心になります。準回りだと、2峰は懸垂下降になります。単独なら、懸垂下降だけで済ませられる準回りのみ可能。

前穂まではアルバイト、前穂を過ぎて明神5峰台地の泊り場までが楽しい行程、今日の南西尾根の下りは、尾根分岐での道迷いをしないことがプチ核心のアルバイトでした。

■ タイム

前夜は、夜10時に仕事を済ませ、12時、同行者との待ち合わせ、深夜2時ごろ沢渡着。すぐ睡眠。

4時ごろ起き出し、5時ごろ乗合タクシーに乗って、上高地INが5時半ごろと、計画より1時間前倒しで、河童橋6時スタートです。

岳沢小屋には8時前に到着、20分ほど休憩して、紀美子平10:00、前穂到着が10:40、前穂出発11:00です。

奥明神のコル12:00、明神13:30、2峰クライミング終了14:00、5峰台地15:30、という行程でした。5時半出発なので、10時間行動です。

本日は、6時5峰台地出発、南西尾根終了点8時、河童橋8:30と 2時間半で下って帰ってきました。トータル12時間半の山です。

急いで登って良いお天気を捕まえ、悪天候に稜線で捕まることなく帰ってきた、と言う感じです。ゆとりを残して帰ってきました。雨で二日目が短くなったので。

今日明日は両日とも槍穂方面は、雨の予報になっていましたが、今日上高地Inする車が多かったです。

■ 明神岳

明神岳を後にするか、前にするかですが、明神から登ると、2峰の懸垂下降があるだけなので、ロープは50mは要らなさそうです。30mで十分に見えました。

今回、ビレイヤーがいたので、せっかくなのでクラミングを・・・ということで、逆回りにし、2峰のクライミングを愉しむことにしましたが、2Pで、1Pの出だしのスラブがちょっとルートファインディングに苦しむ以外は、易しく、2P目はリード担当しました。易しく快適なクライミングでした。

明神岳はバリエーションルートなので、

 ・落石を起こさないで歩ける、
 ・ルートファインディングができる、

ということが大事なことになります。

泊り場は、主峰直下の泊り場と言う場所はあまり広くなく、むしろ主峰稜線上や、3峰の上に1テント程度の場所がありました。やはり選択肢があって泊まりやすいのは5峰台地かと思いました。

前穂~主峰 特に難しいことはない
2峰 登りがクラミング 2P 30mで足りそう。支点にたくさん古い残置がある。
3峰 容易 岳沢側に道がついている 落石注意
4峰 容易 岳沢側に道がついている 落石注意
5峰下り ルートファインディングしづらい

全体にクライミングスキルよりも、慎重なルートファインディング力が必要そうです。「行けるから、いいや、いいや」と適当に直進してしまわず、丁寧に踏み跡を拾えば、迷わず歩けます。

バリエーションとはいえ、きちんと道を見れば、かならず踏まれた場所が分かります。そういう丁寧な観察眼がないと、ちょっと危ないかもしれません。

今回、2年ぶりに重太郎新道を歩きましたが、かなり整備が行き届いているにもかかわらず、転倒している人や落石を起こしている人がいて、穂高では人為落石がリスクというのは、あながち間違いではないと思いました。

それは稜線だけではなく、樹林帯も同じで、5峰からの下り、南西尾根も同じで、樹林帯とはいえ、スパッと切れたナイフリッジで落ちたら終わり、のところを通ります。トラロープが張られた箇所です。そこのクライムダウンは、もしフィックスが無かったら、懸垂下降になる、というところです。

また南西尾根は登りなら迷うことはないですが、下りだと尾根の分岐があり、間違った方角に進む可能性もあります。途中、尾根が広く、どうとでも歩ける所があるので、道なき道を歩くという地図読みの山をしている経験が必要です。

雨の南西尾根は岩が滑りやすく、慎重さを通常の倍にしておりました。

今回は、どこにもあぶなかしいところがなく、理想な山行が行えました。

■ 補給

テント泊も不必要なギアなどをなく、滞りなく補給&休息が行えました。

心配した水の補給も2.5リットル担いで上がり、南西尾根の下りは、雨であまり暑くなかったので、500㎜リットルのペットボトル1本分を丸々飲まずに休憩なしで下れました。

補給は心配していましたが、ゆとりを残して下山しました。

前夜朝 サンドイッチ&コーヒー 
行動食 チョコパン、おにぎり、塩大福、黒さとう、カロリーメイト
夕食 フライビーンズ、牛タン、丸たい棒ラーメン、白ご飯、ナッツ、韓国のり、カップ酒
朝食 味噌汁と白ご飯、コーヒー

でしたが、カロリーメイト、塩大福、は丸々残して下り、フライビーンズや黒砂糖も余りました。

岳沢でアイス400円、上高地でソフトクリーム370円。

■分担

今回は、分担はテント担当でした。同行者がロープとカム一式を担当。食事はそれぞれがコッヘルを含め、自分の分を用意しました。私は念のため、二人分となるように大目に持って行ったので、カレー1パック、棒ラーメン1食分、アルファ枚1食分はそのまま担ぎ下ろしました。

私は軽量化でシュラフなしのダウン上下&シュラフカバーで睡眠。水は2リットル+ペットボトル1本。もともとが軽いので10kgほどでしょうか。同行者はカムを一式に普通にシュラフだったので、ロープもあり15kg弱くらいあったのではないでしょうか。

運転は半分ずつ。、交通費 高速代 1880円、2550円、走行距離270km リッター/10kgで、ガソリン代は3600円ほど、駐車料金二日分1200円。 4600円ほどでした。バス代もかかります。

帰りの温泉は700円でした。私は温泉卵80円と牛乳150円を飲みました。交通費と比べると、山小屋でのアイス400円、上高地のアイス370円、トイレ&水代200円程度です。

総額、4600円+1250円+900円+200円+400円+370円+700円+230円 =8650円。

■ 初本チャンリード

今年はぜひと思っていた初の本チャンリードが、明神2峰の2P目でできました☆

正直、1P目はスラブの箇所が怖く、リードする気持ちにはなれず、同行者にやってもらいました。

実際、同行者の設置したカムは遠く、私はラクラク手が届くとはいかず、ちょっと苦労して回収しました。1P目は左からもっと易しく登れそうでしたが、そうするとビレイの安全確保の方がイマイチな位置関係になる感じ。直上が一番安全だからです。1P目の基部には壊れた残置カムがあり、バチ効きで、ビレイヤーのセルフとして活用。1P目は、背の高い人向きです。

結局、2P目は見て行けると判断できたので、リードしましたが、同行者によると2P目が核心ということでしたが、本当に2P目が核心なのだろうか・・・?とても易しかったです。アンカーをピナクルにしたのですが、ピナクルには残置スリングが、かなりたくさんありました。

岩角に掛ける支点の作り方を度忘れし、ブーリンでやる方法を忘れてできなかった(三つ峠で初めての時に師匠に教わった)ので、エイトノットで切り抜けましたが、とっさのとき、すぐ出るように復習が必要です。

とはいえ、今回は技術的に、どこにも危なげないところがなく、12の力で10の山に登れた気がします。体力や技術にゆとりを残したナイスクライミングな山でした。

山のストーリー構成としては、峠沢~破風山避難小屋~ナメラ沢を大きくしたようなもので、アルバイト~縦走~地図読み的下山と山のストーリー構成が似ていました。つまり、私の好きなタイプ、ということかなぁと思います。

苦節2年、上高地Inの山は6回目で、やっと、思ったような山ができるようになってきたようで、うれしいです。

≪TIPS≫
・さわんど駐車場は第三駐車場がバスターミナル直結
・梓湖畔の湯 700円
・核心は2峰 前穂ー明神の順だとクライミングがある。逆だと懸垂下降のみ。
・南西尾根も落ちたら死ぬナイフリッジあり(トラロープが張ってある)
・前穂までも虫除けネット必要

・山と渓谷 2004年7月号に記載あり。
 記載の参考コースタイム
  上高地~7番 1時間
  南西尾根~5峰台地まで 4時間(登り)
  5峰台地~4峰 2時間
  4峰~明神主峰 2時間半 (5峰台地~主峰 4時間半)
  主峰~前穂 2時間半


・今回のコースタイム
  上高地~岳沢小屋~前穂 4時間40分
  前穂~奥明神沢のコル~主峰 2時間半
  明神主峰~2峰 30分 (含むクライミング)
  2峰~5峰台地 1時間半 (主峰~5峰台地 2時間)
  5峰台地~南西尾根 2時間 (下り)
  7番~上高地 30分

・南西尾根の下りですごく虫が多いエリアがあった


No comments:

Post a Comment