Monday, March 23, 2015

ゆっくり成長したいこと

■ 差

わたしには2歳年下の弟がいました。

弟は、背が高く、上背があるヘラクレス体型でした。ホントに逆三角、▽です。というのは、小学校前から、水泳をやっていて、県大会に出るくらいで、200mバタフライとか、400mメドレーとかそういうのをやっていたのです。学校の水泳大会では喝采を浴びていました。

スポーツは万能で、筋肉隆々とはこのこと、という感じの青年に育ちました。背も私は小柄で152cmしかないのですが、弟は180cm近い大男でした。牛乳一日1リットルくらい飲んでましたもん。ご飯は私が一膳のところ、3回はお代わりしていたと思います。

で、弟とは2歳しか年が離れていなかったので、子供の頃は、結構取っ組み合いの、掴んだり、蹴ったりの喧嘩も、いっぱいしました。

・・・が、それは中学で、双方から自主的に辞めになりました。

どちらが言ったでもなく、勝敗が分かりすぎて、喧嘩の意味がなくなったのです。

というわけで、男性の体力と女性の体力では、桁違い。 

余談ですが、競争というのは、実力が近いほど激化する、という法則があります。

■ 登攀力差

クライミングは、男性的な活動。男性と登攀力の差があります。それはいかんとも動かしがたい事実です・・・。

例えば、私がクライミングジムに通ったりして、やっとこさ登れるようになった壁、若い男性が、一日目に登ってしまいます・・・(汗)。

そりゃ、もちろん腕力で登っているとかいうのはありますが、腕力も登る力のうちなので、登れれば何でもいい、という結果主義で見ると”登れる”のは、あちら。

現場の山でも、クライミングの突破力で見れば、やっぱり登れるのはあちらでしょう…

ので、私のクライミング力向上は、ゼロをプラスにするためではなく、マイナスをゼロにするため、です。

わたしに突破力を求める人はいない。

しかし、だからと言って、上手に登れないからと言って、クライミングが楽しめないか?というとそうでもなく、ゲレンデなら、初心者も上級者もみな一緒に楽しめます。

なので、ゲレンデは、上手も下手も、みんなで一緒に行けます。

難しい課題の隣に易しい課題があったりしますし、難しい課題も全部難しいわけではなく、核心部まではいけたりします。

大事なのは、皆で一緒に上手になろう!とか、安全管理を人任せにしないとか、それぞれ各人が段階的なステップアップをしよう!という意識を持つことです。

クライミング力で競争しても仕方ありません。もう、やる前から勝敗は明らかですから。

■ 体力差 

体力についても、男性と女性の差が大きいのは動かしがたい事実です。

功名心と野心に燃える若い男性クライマーは、どんどん難しいルートへ進みたいでしょう。それはそれで良いような気がします。例えば、鹿島槍北壁とか登りたい人ですね。

が、一般的な山岳会の合宿が、鹿島槍北壁登攀を目的にするような場か?というと、ちょっと違うような気がします…合宿先を先鋭化するのは、遭難の元のような?そのような場合は私はテントキーパーですね。

雪と戯れるラッセル三昧を楽しみに、重ラッセルの山。その日進めた分=パーティの実力。それぞれのメンバーが頑張れるだけ頑張る。合宿はそれで良いような? いっくら体力があっても、一人の方が楽、安全とは言えないのが豪雪の山ですし。

あるいは、広河原沢の岩小屋にテントを張って、初心者のワタクシレベルの人は広河原沢左股へ出かけて、プチマルチ&アイスクライミング、登攀をしたい先輩は、2ルンゼ、3ルンゼに出かけて登攀…夜はみなで楽しく宴会、というようなものも山岳会ならでは、で良いのでは?

■ 先鋭化したアルパインルート

最近はフリークライミングで、クライマーのクライミング能力が向上し、先鋭的なルートは、フリー並みの高難度で、なおかつ山なのだそうです。

しかし、12登れる先輩によると、そこまで登れたとしても、高難度アルパインなんてやる人は、ホントに稀だよ、とのこと。

そうだよね~と私も思いました。昔はエイドで登ったところをフリーで登るのが現代は主流となり、その分、難しくなっているのだそうです。

逆に昔は登山靴で登ったところを今ではクライミングシューズで登るようになり、クラシックルートというのはクライミング力的にはさらに易しくなった部分もあるそうです。

例えば、以前、北岳バットレス四尾根と太刀岡山左岩稜、どちらが難しいか?聞いたことがありました。

四尾根は登山靴で開かれたルート、太刀岡はクライミングシューズで開かれたルート。なので、純粋に登攀だけを見ると、太刀岡のほうがクライミング力が要ります。

が、四尾根は山の総合力が必要なので、太刀岡山とは気合の入り方が違います。なんと言っても3000mの場所にあるのです。太刀岡は低山でしょう。

でも、クライミング力を使いたい人にとって面白いのは、太刀岡です。アルパインのルートは、岩場の基部に行くだけで、一苦労です。ザックは重いし、歩きは普通の登山だし。天候の判断力も、山を見る目も要ります。

アルパインを志す若い男性が、例えば、鹿島槍北壁などのルートにあこがれるのは普通ですが、私はそのようなルートは、「すごいルートだな~」と分かるのが大事なことで、自分で登れるようになる、というのは絶対、違う…と思っています。

高難度アルパインには一生行かなくていいです… 知り合いの山小屋のおやじさんですが、鹿島槍北壁でクライミングしていたら、両手で持った岩がごっそり欠けて、岩ごと落っこちたそうです…。

■ クライミング力をつけてしまえば、ゆっくり成長する楽しみがなくなる…

私は今の実力では、これ以上のクライミング力が欲しいとは思っていません。

・・・というのは、あんまり登れちゃうと、実力以上のところに連れて行かれそうになって、怖いからです。

それに、もっと重要なのは、ゆっくり成長する楽しみが失われてしまうことです。

私は、コンペで勝ちたいとか、そういうのは思っていないので…。

友達で、クライミングコンペで優勝し、なおかつ高所の富士山でトレーニングしている人がいます。

えらいな~、将来、谷口ケイを越えるアルパインクライマーに育ってくれるのかな~、頑張って欲しいな~、と思っていますが、私とは、行く山も、行きたい山も、行ける山も、違うと思います。

ゲレンデくらいは一緒に行けると思いますケド・・・

そこを勘違いしないことが遭難を防ぐと思っています。趣味の人と、プロの人は、ギアは同じですが、行く場所が全然違う。

違いが分からない一般登山者の人には、十派ひとからげに見えてしまうと思いますが…。

■ ビレイヤーは売り手市場

世の中はビレイヤー貧乏です…。岩に登りたくて仕方がなく、ビレイヤーを欲している人は、たくさんいると思われ…、思わぬチャレンジ山行の助太刀に、知らないうちに駆り出されてしまうかもしれません。

知り合いの知り合いくらいのクライマーですが、登りたいあまり、身重の奥さんにビレイをさせたそうです…それも奥さん、クライミングを知らない人だそうです…。

そこまで行くと、もう煩悩かもしれない・・・。

でも、私くらいしか登れなくても、登りたい病にかかった時期がありますので、気持ちは分かります。

なんだか、ロープが出ない山がつまらない山のように感じてしまうのですよね。

ですので、そういう羽目(ビレイをしてあげることになった奥さん側)に遭わないためにも、クライミングは、ゆっくり、じっくり上達する、で良いと思っています。

■ レスキュー

いつも誘われて思うのは、「私はこの人をレスキューできるだろうか?」です。

ビレイヤーになると言うことは、相手の命を守ってあげると言うことだからです。当然ですが、絶対に落とさないつもりで、ビレイしています。奇特な先輩が予告なしに落ちたことがありましたが、全部止めました。リードです。

相手が私の保険になるなら、私も相手の保険です。

ただ、クライミング力や体力を過信していて、トレーニングしておらず、また体重差が20kg以上ある人だとちょっと不安です。事故を起こす確率が高そうでかつ、体重があるために、レスキューしてあげられるだろうか?と自信がないからです。

また、まだじっくりは分かっていない人も不安です。悪気がなく、何か失敗をしてしまうかもしれません。

遭難の記事を読むと、自分が遭難者側のシナリオを考えます。例えば、今冬の学習院大学の男女二名の遭難では、最初に遅れた女性の立場に私がなりそうです。

一般的に考えて、小柄な女性のほうが、大柄な男性より、物体として早く冷却化されそうですし、基礎代謝も低そうですし、体力そのものも貯金が低そうです。

イレギュラーな事件が起こった時、経験あるリーダーのもとでないと、あるいはすぐに救助要請するような、弱気の判断をしてくれるメンバーの元でないと、楽しい山が、死の山行になってしまうかもしれません。

そういう意味で、山岳会に自衛隊の仲間がいるって百人力?!ある意味レスキュー専門家です。

■ 老後の愉しみ

私が思うには、近場のゲレンデのクライミングは、体力がなくなった老後にも、十分楽しく登れるので、今クライミングするのは、あとあと老後の楽しみを持つためです。

なんか、クライミングしているおじいちゃん、おばあちゃんってかっこよくないですか?

アイスですが、ゲレンデまでのアプローチで、ぜいぜい言っている人が、氷瀑につくと、
スイスイとラクラクに登っていて、びっくりしたことがあります。

登山は体力が必要なので、長い山行は年齢を重ねるとつらくなると思います。それでも、楽しむには、クライミングは絶好の趣味と言えるかも。ゲレンデであって、山の危険は少なくても、山は山で、清々しいものです。

今目指しているのは、とりあえずは、5級マスター、つまり5.9なら落ちない人です。

が、それから上は、今以上に、ゆっくり成長したいと思っています。

ということで、落としどころ、は、初級のルート、マイナールート、そんなところです。

≪参考記事≫
クライミングを始めるのに遅すぎることはない

フリークライマーのアルパインでの事故原因について






2 comments:

  1. ある人に何度も「落ちても助けられませんよ」と言われながらビレーされてたことを思い出しました♪

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    1. 師匠も似たようなことを言っていたなぁ・・・ そう言えば、ビレイしていて、写真撮っていい?と聞かれて、怖いからダメって言ったことが・・・。でもちゃんんと固定するよ? と言われましたが、ダメ、と言って、写真は無しになりました(笑)

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