Tuesday, January 28, 2014

支点の研究 1

■ 原則思考がないと

これはこのブログも読んでくれている人の作ってくれたトップロープの支点です。実をいうと悪い例なので、出すのがはばかられ、もう2か月以上も温めていました・・・・読者の方、ごめんなさい。例として挙げさせてください。

悪い例と言っても、落下したりしていませんから、無事に生きて帰っていますから、及第点の支点です。(支点は究極に言えば、壊れなければ何でも良いので)

設問) この支点のどこが問題でしょう?




まず ツッコミ・・・ 「バックアップのほうが太くて丈夫な木やないか~」 です。

これで丸一日、クラミングして遊びました。 ので、実証実験としては、日本の木は丈夫で、片手で握れるほどの太さでも十分丈夫だということが、これで分かります・・・(^^;)。

もう一個の欠点は、バックアップがメインロープではなく、メインロープと連結しているカラビナにとってあることです。

何のバックアップなのだろうか?と考えると、ロープのバックアップなんだな。

だから、メインロープにバックアップを掛けなければバックアップにならないです(^^;)。 

≪問題点≫
 
 1)支点の選び方 (もっとも信頼できる支点を選んでいない)
 2)バックアップの取り方 (もっともクリティカルなケースに対応していない)

■ では リスク中心思考で検証!

ということなので、リスク中心思考で、検証します・・・

この場合リスクは

  1)立木が倒れる
  2)スリングが切れる
  3)カラビナが壊れる
  4)ロープが切れる

の4つです。

ロープを通しているカラビナにバックアップを取っても、

 1)立木が壊れる、と 
 2)スリングが切れる、

までしか補てんできません。カラビナが壊れたら?バックアップしていても意味なしです。(まぁ起こりにくいことと思いますが・・・安環付ビナを2個でトップロープ支点を取る人もいます)

■ 暗記式の弊害

私が思うのは、やり方しか教えない、「支点はスリングでタイオフで取りましょう、カラビナは安環付を使いましょう」以上終わりな暗記式教え方では、肝心の考え方が身に付かないのでは?ということです。

原則を考えさせないで、「俺の言うとおりにしろ!」なのに、「最近の登山者は考えない」なんて悪口言うなんて・・・ 

私には「原因と結果の法則」は一致しているように思えるのですが・・・。

やはり、ロープワークは原則を教え、考え方を学ばせるべきではないでしょうか? 考えないで言うとおりにしろと教えるから、そうなっているんだろうな~。

原則から考える力があることが、結局はその登山者を危険から守ります。

■ 原則

以下は、この事例から導き出した、こう考えたら、正しく支点設置できるのではないか?という素案です。 もっと良い考え方があれば、ぜひ考えるのに協力してください。

≪思考法≫

 1)もっとも信頼ができそうな支点を探す

 2)どれも信頼できそうになかったら分散、バックアップを取る

一つの支点が十分信頼できることが確信できれば、バックアップはいらない。

このケーススタディでは、リスクは

  1)立木が倒れる
  2)スリングが切れる
  3)カラビナが壊れる
  4)ロープが切れる

で、4)ロープが切れる、はもうどうしようもない、1)~3)を手当てする。

1)の立木は右の立木を使えば、十分信頼できる支点なのでバックアップ不要
2)スリングが切れる可能性はあるので、バックアップ必要
3)カラビナが壊れる可能性はあるので、2枚使う

結局、一番大きな立木にスリング2本、カラビナ2枚で、支点を作る。スリングとビナが同時にこわれることは考えにくいので、同じビナにスリングを掛けてかまわない。

■ 参考

参考までにこちらは師匠が作った同じくトップロープの支点です。シンプルで美しく出来ています。












































これを作った人は超有名なクライマーさんですので、百戦錬磨と言えるでしょう。

残置のスリングは二股の木の一本だけに掛けていますが、百戦錬磨は2本もろともスリングを掛けています。これで立木が折れる心配はかなり少ないですね。2重使いのスリング1、2枚のビナ、それも安環付です。

悪い例の支点を作った人は、百戦錬磨氏の講習を受けています、が、受けているからと言って、弟子が同じスキルを自動的に得れると考えるのは間違いで、やはり、支点作りと言うのは考えて身に付くものだと言う気がします。

私はケーススタディが有効な学習法のように思います。 

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