Tuesday, December 3, 2013

冬靴購入は夏山も込みで考える

■ 冬靴購入はトータルシステムで

冬靴購入の注意点ですが、最大の問題点は・・・

 結局、買い直しになる 

という点です。

その理由は、

やろうとしている山と靴が合わないから

です。

なので、靴を買う時は、

靴の用途をよく知ること

が大切です。

■ その意味するところは?

しかーし、そんなことは分かっていますよね~(笑)? でも、まとめるとこうとしか言えない。

意味するところを詳細に語る必要があります。

で、下の写真を見てください。(スイマセン、私のメインの冬靴 スカルパサミットライトは車に乗っかっていて、映っていません)

上の段は、私の靴です。 

下の段は夫の靴です。

①はアプローチシューズ ②は軽登山靴 ③も軽登山靴、冬靴はスカルパのサミットライトがメインユーズです。

④は夫が富士山登山用に買った安靴、⑤はローバータホです。 




スカルパサミットライト
で、冬山をやるにしても、どの段階までやるかで必要な靴が違ってきます。

■夫のケース ”ハイキングの靴 + ちょっといい夏靴 作戦”

夫は、登山=ハイキング、と思っていたので、最初に買った靴は④のソールの柔らかい軽登山靴です。見て分かる通り、防水性にも乏しく、足首のサポートもほとんど期待できません。

買ったお店はゼビオ(非専門店)です。これで「富士山も登れるよ~」と言われて買っています。一般の人は知らないのですが、日本一高い山、富士山は、夏の登山道としては楽勝の山で大した靴が要らない山です。ですから、「これで富士山に登れるよ~」と言われて、「どこでも登れるんだな~」と思ったら、”嗚呼、勘違い!”です。

夫はその勘違いを地で行き(笑)、-22度にもなる真冬、厳冬期の北八つと天狗岳もこれで登っています(笑) 夫曰く「足が冷たい・・・」そりゃ行くのも嫌になるのが当然です(笑)

この靴には、6本爪の軽アイゼンはつきますが、冬山で必要な12本爪のアイゼンはつきません。

今はこの靴は3~4時間程度のハイキングや普段の家の近所のお散歩用になっています。
たとえば、三つ峠、日向山、大菩薩、夜叉神峠はこの靴です。ソールの柔らかさが遊歩道的な整備された登山道を楽に歩かせてくれます。

夫の冬靴はローバータホです。これは、厳密には冬靴ではありません。夏の縦走用です。ローバータホは夏にアルプスなどの険峻な場所を歩いたり、重いテント泊装備を背負って歩くときにちょうど良い靴です。

しかし、厳冬期ではあっても、小屋泊まりで、八ヶ岳のピークハントをしたり、お正月トレースが期待でき、ラッセルがあるといってもほんの一瞬の鳳凰三山の縦走などでは、この靴でなんら困ることはありません。この靴は冬靴としてはソールが少々柔らかいので、柔らかいソールにも対応している前後がプラスチックストラップのアイゼンしか付きません。

この靴で、冬季に長いラッセルがある山や、登攀的要素が強いバリエーションルートなどは無理があります。保温材がないとラッセルが長いと足が冷えますし、登攀的要素が強いとソールが固くないとつま先に乗れません。

この靴では当然ながらアイスクライミングはできません。

冬の靴は、保温剤入りとなしがあり、コバと言ってアイゼンが付く形状をしているかどうかで、どこまで冬山をやるのかが別れてきます。

一般に、縦走しかしない → ラッセルあり(保温剤入り) → クライミングあり(ヴァリエーション、登攀)とアクティビティによって靴は段々高くなります。 

しかし、中ではアイスクライミングは特殊分野です。夏にフリークライミングがアルパインの流れと別れた特殊な一分野であるのと同じで、冬はアイスがアルパインから凍った氷柱のクライミングに特化した限定的なアクティビティです。

まとめると、夫は、厳冬期は

 ・トレースがある山しかしない
 ・お正月登山しかしない
 ・ラッセルがあるとしても残雪期

なので、ハイキング向けの靴 + 夏靴の上級モデル 

で十分というわけです。 これは買う靴が二つで済んで、賢明な選択でした。

■ 妻のケース  ”靴どんどん増殖コース・・・(汗)”

一方、私ですが最初に買ったのが、②のシリオです。この靴はソールの固さも十分で夏の岩稜帯の縦走もハイキングもこれ一足でOKです。軽アイゼンもつくので、低い標高の冬山(ほとんどが樹林帯の甲武信ヶ岳など)ならこれで行けます。でも、同じほとんど樹林帯でも厳冬期の鳳凰三山にはこれではぜったい行きません。山小屋のおやじさんの目が怖くてとてもそんなことはできません(笑)

それだけでなく、この靴ではスペックが足りないと感じます。この靴はとても良い靴で、夏の北アの岩稜帯の縦走はソール的にはこれで十分です。

私は岩場で靴が追従してこないと思って靴を買い換えたくなり、隣の③を買いましたが、単純にこのシリオはサイズが私には微妙に大きすぎ、岩場ではタイトな靴の方が快適だ、ということのようです。

逆に言うと、勾配が緩い山では足が楽なんですね。こないだも黒富士に、この靴を履いて行ったら、「歩きづらそうにしている」と言われました。 たぶん、足が靴の中で滑るんです。だから、標高が高くても低くても、急峻なところを歩くと歩きづらい靴です。

シリオも冬用の12本爪のアイゼンは付かないので、購入したのがスカルパのサミットライトです。

この靴はコバが後ろについているので(ローバータホはついていない)、セミワンタッチのアイゼンが付き、これは腕の力が弱い私にはすごく役立つ機能でした。アイゼンの装着スピードも速くなったし、付けるのが楽で、全然緩みません。

ただし、これは前のコバはついていないので、ワンタッチアイゼンはつきません保温材も入っていないので、長いラッセルがあって足を長い時間雪の中に閉じ込めておかなければならないような種類の山行には不十分な靴ですし、この靴でアイスクライミングをするにはアイゼンの種類を選びそうです。

夏山の岩稜帯の縦走でシリオがイマイチだったので、今年夏山バイトの帰りに③を購入しました。スカルパのシャルモgtxです。これは北アの夏山の縦走の、山ガール御用達靴です。簡単な冬山までOKです。まだほとんど新品。山ガールが去った後だったのでセール価格で安く買いました。これは12本のアイゼンも付きます。用途的にはローバータホと近く、夏冬両方のシーズンを一足で済ます、という発想の人に良い靴です。

最後に①のスカルパのモジトはおしゃれなアプローチシューズで、近所の散歩用です。これはゲレンデと言われる岩場に行くまでのちょっとした林道などを歩くためのもので、ソールはビブラムで無舗装の道に向いていますが、まったく足首のサポートはありません。

ブーツでなくてシューズである分、コンパクトにまとまるので、沢登りをした後、下山するときに沢靴で下山せずに済みます。 私はコレで甲武信ヶ岳から下山してきましたが、全然問題なしでした。

夏の山なら、足首が十分強い人ならば、ブーツによる足首のサポートはイラナイので、ソールだけが問題となり、この靴のソールは結構優秀です。 同行者が無名ブランドの靴を履いていましたが、ソールがビブラムでないので結構大変そうでした。ただ沢の帰りで軽量化したいとかいう事情でなく、普通に登山だったら、スカルパシャルモかシリオを選ぶと思います。なにしろ、おしゃれな靴なのでもったいない(笑)!それに足首から葉っぱが入ってきます。

足首の強さは私はバレエをしていたので他の人より強いかもしれません。一般に登山を初めて間もない人ほど足首は弱いはずで、足首までガッチリ固める靴は足首の捻挫予防になります。

ねん挫だけはしないようにしないと、山でねん挫したら即ピンチです。

■ アイゼンが付くかつかないか =コバ

アイゼン(クランポン)に関していうと

4本爪 → 無用の長物
6本爪 → 夏の雪渓、冬の標高が低く、なだらかな雪山  ★
10本爪 → 足が小さくて12本のアイゼンが付かない人のため
12本爪 → 冬山用  ★
12本爪で前爪が縦 → アルパインクライミング(ミックスクライミング)用 サルケンなど
モノポイントアイゼン → アイスクライミング用

です。普通の人は ★だけ揃えていたら十分です。

ただ私のスカルパサミットライトには6本のアイゼンは付きません。夫のローバータホには6本も12本も付きます。でも夫のタホには私が好きなセミワンタッチアイゼンは付きません。

これは主にコバの形状による制限です。

■ まとめ

というわけで、

・ソールの柔らかさ → 固いほうが岩場向き・雪山向き
・足首のサポート → ねん挫予防
・保温材      → どれくらい雪の中に足を突っ込んだままでいる時間が長いか
・装着できるアイゼン → 縦走(普通に歩く)用 vs クライミング用か

※縦走用、という言葉を聞くと、え~冬山を縦走なんかしない、と思うと思いますが、そうじゃなくて、クライミングしないで歩くだけという意味です。 縦走用という言葉は普通の歩いて解決できる雪山という意味です。

縦走用の他は、バリエーション登攀用(要するにアルパインクライミング用)、アイスクライミング用があります。

つまり、靴を買う時は、一年間をトータルで考えた方が得です。

 低山のハイキング用と夏山縦走を組み合わせる = 妻のケース でシリオ

 夏山縦走と軽い冬山を組み合わせる =夫のケース でローバータホ

です。 スタート地点での組み合わせが違うと靴を一足余分に買うことになります。

私たちの山行を考えると、夫のようにローバータホ1足で夏山の鳳凰三山も冬山の鳳凰三山も済ませてしまった方が経済的でした。

私の冬靴サミットライトは保温材は入っていませんので、行動を止めない縦走主体の山にはちょうど良いですが、ビレイしたり、じっとしている時間が長い山をするなら、もう一足必要になり、靴は計5足というようなことになってしまいます(><) 

靴だけで一体いくらかかっているのか・・・計算してみるのも恐ろしいです・・・(汗)

■ 2017年5月 追記

私は、アイスクライミングを冬季のメインの活動としているため、冬靴のサミットライトは、保温材もはいっていないことがあり、まったく出番なしです(笑)。

出番があるのは、アイス用のダブルのブーツです。縦走もこれで済ませます。しかし、こちらはクライミング用に少しタイト気味に合わせていますので、ロングな縦走で靴と足の間に隙間が欲しいようなケースでは、大きめが良いかもしれません。長く歩くと足がむくむからです。

また、アイスもミックスへ進むと、靴が変わってきて、一体型になります。一体型のブーツもすでに購入しました。






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