Saturday, October 26, 2013

パーティを分断させて遭難死を招いてしまった話から

■ 団体ツアーでの遭難死

久しぶりに知人のサイトを覗いてびっくりしたんですが…ちょっと炎上中?

比良山系滑落死亡事故の続報

かいつまむと、遅い人を単独で下山させてしまい、その人は無事下山したが、それを追った別の人が遭難死してしまった、という遭難事故です。サンケイの団体登山。

何人かで登っている場合、パーティをばらけるのが良くない、ということは登山の常識だと私は思うのですが、反論が一杯寄せられています。それにビックリしています。

それどころか、遅い人が要る場合、パーティをばらけても良い、単独下山させても良いと考える人が、ガイドさんのようで、そこにも二重にビックリです。

山登りでは、一番弱い人に合せる、これ鉄則ですよね。ところが今時のツアーはそうじゃないみたいですね…ああ、恐ろしい。

パーティがばらける、というのはできるだけ避けるべき事態なのに、そこのところが登山のプロにおいても、共通の認識になっていない、ということにカルチャーショックを受けました… 

参加するメンバーの側では、脚が遅い人に早い人が合わせさせられるのが権利侵害だと、声高に主張する人たちがいるってことに、びっくり!です。

人一人の命より、自分がツアーを満了するほうが重要なのだろうか・・・(汗)

・一番弱い人に合せる
・パーティは出来る限り分断させない
・無理のあるコースタイムは選択しない

■ その速さ、有意差?

でも、そもそも、20人も30人もいるようなツアーの中で、足が速い、遅いって言ってもなぁ…。

団体行動だとコースタイムより早いなんてことは絶対にないと思うんですよね…参加者には健脚さんはいないと思います。健脚と言うのは標準コースタイムの8割以下で歩ける人だと思うので。

となると、どう転んだって遅いわけです。 どうせ遅いなら、楽しいほうがよくありませんかね?

どっちにしろコースタイムの1.5倍はかかるのがツアーなんだし、そんな中で、早い遅いと言っても、正直コースタイム全体でみると、あんまり有意差がないような気がするんです。

1分あれば50m位先はすぐ行けますから、早そうに見えても実は早くないことは多いし、なんだか、早い遅いのスケールが、ずいぶんとそもそも的外れな気がします。 ずいぶんと視野狭窄だなぁって感じがします。

■ 想像力の欠如?

この”遅れていない自分たちだってツアー代金を払っているのだから”という権利意識は、もしかして”想像力の欠如”が一番の原因なのではないかと思ったりします。

・もし遅いのが自分の側だったらどう感じるか?
・もし遅い人が自分の家族だったらどうか?
・自分がパーティから離れて単独下山することになったら、心細くないか?(そもそも団体ツアーに参加するような人たちですし…)

そういう想像力の欠如が、たとえば、原発を作る際に、「事故が起きたらどうなるか?」「これが自分の敷地内に合ったらどう思うか?」、そういう想像力の欠如と根本が全く同じような気が・・・。これも、視野狭窄症ですよね。

要するに

・弱い人への思いやり
・仲間意識、助け合い意識

が欠如しているんですよね。 平たく言うと自己チューなわけなんです。

これって大体いつごろそうなったんでしょう?個人主義のアメリカの影響と言われますが、アメリカ人でこんな思想の人はいないんじゃないかと思うのですが・・・アメリカの個人主義は、最初から団体行動そのものをしないものだと思います。何しろ、ガレージから起業して世界企業まで育てるのがアメリカンドリームですから・・・どこでどう間違ったんだか・・・な誤解で、個人主義はアメリカ由来とバッシングを受けていますが、それは日本人の大誤解で成立している単純日本培養自己チューなのではないかと・・・(^^;)。ま、余談ですが。

■ パーティの時の歩き方

団体ツアーに参加するにしても、8人程度のツアーに参加するにしても、友達同士で歩くにしても、パーティで歩くときは、歩き方があります。

パーティで歩くとき、リーダーがトップを歩きますよね? で、一番弱い人はたぶん2番手を歩きます。
サブリーダーがいちばんお尻を歩きます。間は適当です。

1番 リーダー
2番 いちばん弱い人
3番~ その後は適当
最後  サブリーダー

この順序で行くと、リーダーと2番の間が多少開いて行くのが普通です。

だってリーダーといちばん弱い人ですから(笑) そこで2番の人は焦るわけですが、間が開いても、実はそれで良かったりします。

リーダーはセカンドの様子を見て、姿を見失わない程度にスローダウンするはずです。まぁたまに勝手に行ってしまうリーダーもいますが(笑)、それは単にルートファインディングに一生懸命で、気が付かなかっただけでしょう。

また間の間隔は、ケースバイケースで、簡単な道は、各自気ままに歩き、難しい場所は密になって、が普通だと思います。 少し開いたら先の人たちは休憩しつつ後続を待てばいいだけ。

ラストのサブリーダーが全体が見渡せる位置に居るので、リーダーに早すぎるなら早いよ~と言ってあげたり、先頭では気が付かないようなこと(こっちのほうが歩きやすそうだとか)を気にかけてあげるのが役目だと思います。大体先頭にいたら、誰がバテているのかとか分かりません。後ろには目がないですしね(笑)

下山の時は逆になることもあります。サブリーダーがいない場合はリーダーが最後になります。

運動会の行進のようにぴったり行列して歩く必要はないんですけどね… 団体ツアーの人は脚が遅いのもあって、ムカデ競争のように歩いていますが、ぴっちりになる必要はないです。

ぴっちり歩くと足を置く場所さえも自分で考えなくなりますから。全然ライン取りや歩き方の勉強にならない。

この順番を知っていれば、何人かで歩くとき、その人が自分をどこに入れるかで、自分の強さをどう思っているか?が分かったりします。 自ら最後尾に回ってくれる人はサブリーダーの自覚がある人なんだろうなぁとか、セカンドの後ろにつけられたら、一番弱い人の面倒を見てね、って意味なんだろうとか(笑)。

ちなみに、登山を学びたいとき、いちばん勉強になるのはトップを歩くことなので、お尻についてくれる先輩は良い先輩です。 勉強させようとしてくれているんですね。 自分が先に行ってしまうと後ろの人はあんまりルートファインディングの勉強になりません。


■ ”団体”ツアーは登山向きではない

”団体”ツアーは、考えれば考えるほど登山向きではない・・・。

登山では足が揃った、という言い方をしますが、みんなが大体同じくらいの実力であれば、パーティがばらけることもなく、遅れる人もいないわけですが、人数が増えれば増えるほど、実力が揃う確率としては低くなるのが道理でしょう。

その上、人数が増えれば増えるほど、メンバーの意識も、連帯感や責任感が薄くなります。

となると、大人数はいいことなしです。

こういう遭難例なんかを読むと、ホントに団体ツアーにだけは参加すまいと更なる決意を固めてしまいますね。 

【参考】
ガイド登山を120%活用するには 
http://blog.goo.ne.jp/osakahensyu05/e/3d3e588611b47497eb48ce8ec055bbbe

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