Saturday, December 8, 2012

読了 『ウェストンの北岳』


最近できた県立図書館は地域資料が充実しています。前に行ったときにふと見たら、あったので借りてきて読むことになった本。今日返本しました。アマゾンにはなく図書館で借りるべき本ですね。
https://www.lib.pref.yamanashi.jp/licsxp-opac/WOpacTifTilListToTifTilDetailAction.do?urlNotFlag=1

ウェストンさんは牧師さんで、”近代登山の父”なんて呼ばれている人です。上高地にはウェストン碑があり、ウェストン祭りがあります。

が…登山新参者には、近代登山のなんたるか?が今ひとつ分からない…

ので・・・

とりあえず読んでみました。

■ おかかえ?

私は10年ほど前は市場の調査会社に短期間いたのですが(すぐに辞めてしまった)
その市場調査の仕事でベトナムに出かけたことがありました。

ベトナムで色々調査するとなると大変面倒で、1人で行くアメリカやパリのようには行きません。

言葉がまずまったく通じない。

ので、お抱えのガイドを雇います。そして車もお抱えを一台雇います。ガイドさんや運転手とは
丸一日行動をともにします。 ガイドさんが頼みの綱なのは…その人がうまいことやっているか
どうかまったくコチラには分からない…言葉が分からないので評価できないからです。

ハノイとホーチミン両方の企業をめぐりましたが、まるで籠に乗っていく大名の行列のようで、
人を使うことに慣れていない私は自分の父ほどもある運転手が日本円にしてしまうとほんの少々の
チップに感激してくれたり、ガイドさんが電話帳を調べるのまで手伝ってくれて助かったのですが、
色々と考えさせられました。

こうした人たちとは完全に雇う側雇われる側の上下の関係が確実にあり、そういう活動を長く行うと、
先進国は上、という価値観が知らないうちに身に染まってしまいそうでした…。

その後、タイにもいくのですがやはり同じで感覚としてはギャングルやアフリカの大地を旅しないまでも、植民地に宗主国が赴く感じで、私はスーツに身を固め、高級ホテルに泊まり(・・・こういう国には外国人ビジネスマンは高級ホテル以外あてがわれないのです…不可抗力)、地元のそうした協力者達からみたらとんでもなく贅沢でセレブな人に見えてしまうでしょう…でも海外出張先ではそうでも東京出張では上限1万円が普通の会社でいたって庶民なのですが。

貸切で行くので、仕事の成果にも彼らの協力の有無が非常に大きなウェイトを占める…そんな感じでした。

この『ウェストンの北岳』で思い出したのはそういうスタイルの旅でした。

ウェストンさんが北岳に登ったのはまだ1902年。100年以上前なので、当時、日本では外国人が珍しかったのでしょう。 彼を見て泣き叫ぶ子供達など出てきますし、清潔感のない半裸の子供たちがものめずらしそうに彼に近寄ってきたりしています。

でも、この手記を読むと、ウェストンさんの以前にも、ちゃんと日本の登山者たちがそれほど秘境中の秘境、
と言うほどでもない風に、そうですね、若者の屈強なのは割と普通の感覚で、北岳に登っていたんだろうなということが伺えます。 北岳自体がそんなに知名度があるわけでもなかったんでしょね。

ウェストンさんは1890年に阿蘇山に登っているので、北岳は1902年なら12年も後にきたことになります。

その北岳登頂は、芦安に入るまでも、ひと苦労で、やっとったガイドは3人も!年配者と若年者、壮年者と。きこり小屋に泊まってノミに食われたりしています。

日本人の文明の開化具合に対する感想めいた記述と、日本人が使っている道具が出てきます。

岩場はわらじのほうが歩きやすいのだそうで、登山靴にわらじを巻きつけたりしてみたり…
わらじは結局はバラけてしまって無駄な行為だったみたいですが。

一方虫除けについては油紙をしいて虫除け剤を払ったところ効果があったとか、ランタンを持っていて闇の中でも行動できた、それはガイドたちにも非常に喜ばれたとあり、当時の日本が追いついていなかった点も伺えます。

白いアネモネと書かれているのはキタダケ草か、ハクサンイチゲでしょうか…

山行の内容としては、現代の北岳登山の快適さとは程遠く、ヤブコギにむしろ近いような感じでした。

ハイマツエリアなんかは、「ハイマツを傷つけないように進みましょう」っていう状況ではなく
ハイマツの上しか、歩こうにも歩く場所がない…

この時代というのは、海外から訪れる外国人にとっては現代日本人がベトナムを訪れるかのように敷居が高かった、ということをうかがわせる『ウェストンの北岳』。

今、世界の登山者にウェストンさんが見た以上に日本の山は知られているのでしょうか?

私は日本の山はコンパクトに山の要素が凝縮されていて本当に素晴らしいといつも思うのですが、山ではほとんど外国人を見かけないので・・・特に南アルプスは見かけませんねぇ。どうしてかしら?

ウェストンさんの時代から100年以上、日本人のPRベタはあまり進化していないのではないかな、と思ったりしています。

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