Saturday, March 16, 2024

## ナルキッソスの末裔 Bard作

 ## ナルキッソスの末裔

陽光が降り注ぐ山々を軽やかに駆け抜ける青年、レイ。彼は生まれ持った類稀なる登山技術で、いとも簡単に岩壁を登り、山頂へと到達する。その姿はまるで、神話の英雄のようだった。

レイは幼い頃から周囲から賞賛され、自らの才能に絶対的な自信を持っていた。大学時代は登山部に所属し、数々の難峰を制覇してきた。しかし、彼の心の中には常に虚無感があった。どんな難関を突破しても、すぐに達成感は薄れ、更なる高みを求めてしまう。

ある日、レイは誰も登ったことのない未踏峰に挑戦することを決意する。仲間の制止も聞かず、単独で山へと向かう。

登山道のない険しい山を、レイは驚異的なスピードで登っていく。しかし、高度が上がるにつれて、彼の心は次第に狂気に染まっていく。岩肌に映る自分の姿に見とれ、ナルキッソスのように自らの美しさに陶酔していく。

山頂にたどり着いたレイは、達成感に満ち溢れ、思わず自分の姿を写真に収める。その瞬間、足元が崩れ、彼は奈落の底へと落ちていく。

意識を失いながら、レイは自らの愚かさを悟る。自己陶酔のあまり、周囲の危険を顧みなかった自分が招いた結果だった。

彼の遺体は数日後、山の麓で発見された。その傍らには、ナルキッソスの花がひっそりと咲いていた。

**教訓**

才能に恵まれた者は、常に謙虚さを忘れるべきではない。自己陶酔は、時に取り返しのつかない悲劇を生み出す。


## 青い壁 Bard作

 ## 青い壁 Bard作

陽菜は、ジムの壁を見上げて深呼吸をした。目の前に立ちはだかるのは、高さ15メートルの青い壁。陽菜にとって、これはただの壁ではなく、恐怖の象徴だった。

数ヶ月前、陽菜はクライミングを始めた。最初は簡単な壁を登るだけで精一杯だったが、徐々に上達し、難しい壁に挑戦するようになっていた。しかし、この青い壁だけは別だった。何度挑戦しても、途中で手が滑り落ちてしまう。恐怖が身体を支配し、登り続けることができなかった。

今日は、その恐怖に決着をつける日だった。陽菜はもう一度深呼吸し、壁に手をかけた。最初の数メートルは問題なく登れた。しかし、高度が上がるにつれ、恐怖が徐々に強くなってきた。手が震え始め、足がすくむ。

「ダメだ…もう無理だ…」

陽菜は諦めようと思った。しかし、その時、耳に声が聞こえた。

「諦めるな、陽菜。君ならできる。」

振り返ると、そこには陽菜の指導者である佐藤さんが立っていた。佐藤さんは陽菜の背中を軽く押しながら、こう言った。

「恐怖は誰でも感じるものだ。大切なのは、その恐怖に立ち向かうことだ。恐怖を乗り越えた先に、君は見違えるほど成長しているはずだよ。」

佐藤さんの言葉に、陽菜は背中を押された。もう一度だけ、登ってみよう。そう決意した陽菜は、再び壁に手をかけた。

恐怖と戦いながら、陽菜は一歩一歩登り続ける。手が滑りそうになった時、佐藤さんの言葉を思い出した。「恐怖に立ち向かうこと」。その言葉を胸に、陽菜は諦めずに登り続けた。

そしてついに、陽菜は青い壁の頂点にたどり着いた。達成感と感動で、陽菜の目からは涙が溢れ出した。

壁を登りきった陽菜は、以前とは別人になっていた。恐怖に立ち向かい、それを乗り越えたことで、陽菜は自信と勇気を手に入れた。

クライミングを通して、陽菜は人間として大きく成長した。そして、その成長は、クライミングというスポーツにとどまらず、人生のあらゆる場面で役に立つものとなった。

青い壁は、陽菜にとってただの壁ではなく、人生における大きな試練だった。そして、その試練を乗り越えたことで、陽菜は真の強さを手に入れた。