Saturday, January 23, 2016

阿弥陀岳 御小屋尾根

■ラッセルの山 御小屋尾根

今日は御小屋尾根にいってきた。谷川方面のラッセル山行の前座としての御小屋尾根。


御小屋尾根は、基本的にマイナールート。歩く人がとても少なく、歩いたとしても、別のルートの下山路に使われることが多い。しかし、そのおかげで踏まれていない可能性がある。入山者の必ずいる赤岳方面とは異なり、降雪直後はラッセルを期待できる

今回は、火曜の降雪のあと、一週間続けて降雪があり、しかも気温が終始低かったので、ふかふかのパウダーの可能性もあった。

阿弥陀岳は冬の山。阿弥陀岳がバリエーションの山だから、だ。良く知られているだけでも、

 阿弥陀北陵(ほとんど歩きの為入門)、 
 阿弥陀南陵(一般ルート化してしまったバリエーションと言われている)、
 阿弥陀北西稜、
 阿弥陀中央稜(広河原沢中央稜(中尾根))、

そして、もっとも易しい御小屋尾根がある。

御小屋尾根は山頂付近の一か所以外は取り立てて危険な所がない。マイナールートの為、あまり人が入らず、降雪後はラッセルが期待できる。

今回は、ラッセル山行の前座が主要な目的なので、ラッセル期待ができる、身近な山域のルートということで御小屋尾根になった。

また数多い阿弥陀のバリエーションに今後行きたい気持ちがあるならば、阿弥陀の山頂から、それぞれの下降ルートがどのように派生しているのか?ということは、押さえておきたいポイントだ。

なぜならルートに登れても、山頂からの下りでルートミスし、それが遭難につながってしまう事故も多く起きているからだ。

阿弥陀北陵は、ルートガイドには「ルートファインディングも熟達してから登れ」と書かれていた。一般にルートファインディングは、登りより下りが難しい。尾根の下りは、何度やっても難しい。

■ 計画のマイナーチェンジ

今年は暖冬で、アイスも発達しないと思っていたら、寡雪でアイスは、100年に一度のバーゲンとなった。と思っていたら、今度は南岸低気圧で、里でも雪

八ヶ岳では、40cmの降雪で、やっと雪で覆われた本来の冬山の姿になったらしい・・・と思ったら、ずっと冷えつづけ、雪は焼結している暇がないのではないか?と思われた。

今回は、里でも大雪になった時点で、道路状況が心配された。雪もだが、凍結がスリップ事故を招く。

というわけで、登山口集合は、没。車が核心化する可能性があるため、道の駅集合とする。

道の駅集合としたものの、車3台分のうち、四駆&スタッドレス&チェーン装備ありは、1台のみ。メンバー6人が全員乗れる車は、ない。

ということで、より雪道走行の確実性が期待できる、美濃戸口への登山口変更。美濃戸口は、バスが入るので、除雪されているだろうから、除雪が間に合わない降雪以外は、チェーンは不要だろうと予測できた。

これは、正解だった。ただメンバーは2名、朝の時点で脱落。帰りを気にしたためだ。

■ 記録的寒気の日を避ける

美濃戸口へ変更したものの・・・さらに問題は続く。山行予定日の翌日のお天気が大荒れ40年に一度の寒波。

八ヶ岳では、マイナス17°の低温は珍しいことではない。が、やっぱり、マイナス36度の寒気が入ると、ものすごく寒い。ー36度の寒気が入った時に、アイスをしたら、冬靴なのに、つま先が黒くなった。

というわけで、万が一が許されない。こんな日にソロで行って、万が一の転落が起きたら、他の日なら助かるものも、助からない。

普通の気温だったら、例え、転滑落や道迷いなど不慮の事故で、ビバークとなっても、一晩くらいは我慢できるかも?と思う面もある(それでも、ツエルトやダウン上下、コンロは持っている前提)が、マイナス36度の寒気が入る日では、そんな羽目には、120%陥りたくない。普段だって、ビバークに、ならない努力はするが、今回はより一層。

しかも、本番の山の前座として、メンバーと意識合わせが目的になっている山行だ。

というわけで、天気の崩れるポイントは?というと、午後から崩れる予報。翌日は記録的寒波。午後、風雪の予報の段階で、森林限界を超える稜線歩きはない、と予想できた。

午後から降雪の予報が出ていたので、午後登頂は絶対にない。 前回は、11時にピークアウトしていたので、足が強ければ、11時トップアウト可能だが、ラッセルしながらでは無理だろう。

正午には下りに差し掛かっていないといけない。ということで、登頂期待は薄く、11時に折り返し決定。

結果、6:30出発、11時折り返しの予定だ。 実際は予想どおり、出発準備に手間取り、7時出発となった。

前回、御小屋尾根より時間のかかる、中央稜で、11時トップアウトだった。使える時間が4時間半だと、山頂手前で引き返してくる計算になる。

ので、結果としては、予想通りの展開になり、森林限界を超える手前で、11時の時間切れとなり、Uターンして、下山、12時半ごろ、安全圏到着となった。

下りは、御小屋尾根ではなく、美濃戸方面へのマイナー道を下った。同じ道より、変化があるほうが愉しめる。それくらいの贅沢は、樹林帯の中で、トレースもしっかりあるので可能だった。

この道は、2万5千の地図には、記載がないが、南沢のすぐ近くの開始部に降りれる。かなりでより早く下れた。下りだったので、スピードはかなりUPした。

■ 寒い朝

土曜の山は、仕事明け。正直、早起きが大変だ。だが、そんなことに注文を付けることができる自由は持っていないと思っている。

金曜の夜に仕事を済ませて、帰宅すると、夫が熱を出して寝込んでいた。これでは山は無理だ。

いつも一緒に寝ているが、夫とは別に寝ないと風邪がうつってしまうため、自宅なのにシュラフにもぐりこんで就寝・・・。よく寝れない。睡眠不足だが、山ではいつも睡眠不足なので問題はない。3時半に起きて、4時半に出発する。

今回は2名初心者を連れて行くので、余分なギアが入っている。念のため、人の分のオーバーミトンや替えソックスも入れてある。

朝、真っ暗い中、道の駅に着くと、結構、車が多い。この寒空の下、Pキャンしている人たちさえ、いるようだった。同行者は車中泊だが、とても寒かったと言っていた。

20号は凍結はしておらず、快適に飛ばし、いつも通りの時間で到着。慣れた道だ。向かうすがら、とても美しい月が、南アの上に見えた。大きな満月で、まるで、かるたの絵柄のようだった。

友人と落合い、私の車1台に乗り合わせ、美濃戸口へ。友人の車はバンで車中泊はできるが、四駆ではない。鉢巻道路が走れるのは確認済みだったが、朝の凍結でタイヤが轍に取られそうになる。

美濃戸口までも、快適走行で問題なし。だが、途中は何台か抜かれる。でも、雪道でスリップするより、抜かれた方が良い。

美濃戸口に着くと、近いほうの上の駐車場はいっぱいだったので、下の駐車場へ停めるが、数台だった。

最近、美濃戸口にオシャレなカフェが出来て、飲食すると、駐車が無料になるらしいのだが、どうやって飲食する予定だと分かるのだろう・・・

一応、御小屋尾根登山口付近まで、入れるところまで入ってみるが、駐車場へ戻り、500円支払う。

登山開始は、結局7時。乗り合わせや、支度にも、アレコレと時間がかかるものだ。

登山道は最初は一人分のトレースがあったが、吸収されていく先は別荘だった。

まっさらなノートレースの雪原になっている林道へ入る。雪は意外にたっぷりあったので、駐車場でワカンを置いて出たことが悔やまれる。

しかし、トータルで見ると、ワカンがいるほどの積雪量でもなく、積雪量は、すね程度。雪は、ふかふかで、フリクションがあまりなく、歩きづらい。

どんどんと登山道らしくなるが、前にあるのは人間のトレースではなく、鹿のトレースだった。急な個所では、犬かき状態になる。

枝に積もった雪が跳ねて、ザックに雪を降らせる。

御小屋尾根の分岐まで、2時間。1時間半で予定していたが、今年は寡雪で夏道コースタイムで予定していたので、ラッセルになったら、まぁ普通かなと思われた。

■ 協力してラッセル

さらに進んでいると、後続が。単独者だった。モンベルの赤ジャケットに、手首の長い手袋が好感が持てる。休憩中に先頭を入れ替わる。前には、トレースがないが、先に行ってもらう。ザックを見るとワカンとヘルメットがぶら下がっている。ヘルメットということは、他のルートの転進か。

誰かのトレースがあるだけで、ルートファインディングをしなくていいので、楽になり、先に行った人は早いね~と、皆で感心して、ありがたくトレースをたどる。

しかし、そのうちに追いついてしまう。ずっとラッセル泥棒をするのは悪いので、1パーティで一緒にラッセルしませんかと持ちかける。快諾。

あいよ、ということで、今までの労をねぎらう意味で、最後尾に入ってもらうが、当パーティの20代の若手が疲れているようで遅い。一番楽な最後尾を、20代に渡してもらう。

結局、そのお兄さんがパーティ全体の中で、もっとも脚の強い人だったので、先頭を登ってもらう。次につらいセカンドは私が登る。

御小屋尾根山頂では、南沢方面からのトレースが付いていた。お兄さんはこの道はどこへ続く道か知らなかったようだ。たしかに2万5千の地形図には載っていない。マイナー道で知られている。

途中、雪がついた樹林帯がとてもキレイだ。景色を眺めながら、おしゃべりしつつ、ラッセルするのもまた、楽しい。

先頭を歩いてくれたお兄さんは、しっかり冬山の定番装備を身に着けていたので、なんとなく、きちんとした山ヤ教育を受けた人なのだろうな~という気がする。

聞くと、超有名山岳会の人だった。中央稜を登りに来たそうだった。転進で御小屋尾根。

しばらくお兄さんと歩いていたら、だんだん、後続が離れて行ってしまう。なんだかデジャブー感がある光景だ。講師と歩いていたら、段々講習仲間が外れていってしまった・・・という。

お兄さんと話が合い、行くべき沢や互いに行ったことがある沢の話・・・

「何時に降りるのですか?」と聞かれる。
「11時です」 と答えると
「やっぱりそうですよね」 との答え。

という会話をする。今日は午後から悪く、降雪の予定なので、風雪につかまる前に山を下りるのが常識的な安全対策、と思われた。

阿弥陀山頂部が見えてきたが、既に風雪の様相・・・「この風雪だと、もう稜線はないからね」というと、自分のパーティのメンバーは意外そうな顔をするが、先頭のお兄さんはうん、そうねと納得顔だった。すでに横殴りの風雪。

森林限界以上は、風速プラス気温が体感温度。-17°プラス 風速11mで、-28°。だから、普通の風程度で、八ヶ岳としては普通の低温でも、稜線は警戒が必要だし、すでに山頂付近はグレーっぽかった。

急な個所が終わったところで、一本入れ、後続を待つ。軽く何かを口にし、お湯などを飲み、時計を見やると、あれ?!もう10:44を指している・・・ということで、最後の1ピッチをトップで登るが、ひと登りで11時。

時間切れ。

「阿弥陀って、こういう山でしたっけ」と言われるが、たしかにな~と思う。なんだか、下りに使った時のイメージしかなく、今日の御小屋尾根の登りは、なんだか前に歩いたときとは、印象が全然ちがった。

折り返し地点で記念写真を撮ってもらう。予想以上に良いところまで進めた。

帰りは、引き留めては悪いので、別パーティで下り、我々は写真を取りながら下る。御小屋山山頂で、登りとは違う、南沢ルートへ進路を取る。

一般ルートに近いほうが、エスケープとしての価値が高いからだ。知っておくべきルートと言う感じ。ピンクテープがしっかりあり、トレースもばっちりだった。

先頭を行くが、後続が離れてしまい、見えない。仕方がないので、最初の分岐で待つ。雪の下りは、危険個所がなければ、シリセードや滑りも使えるので、早い。後続は雪にはなれておらず、だいぶ待つ。

最後は、徒渉を経て、南沢に合流。美濃戸口までの林道はのんびりと、しゃべりながら歩いたが、それでも下山は午後の早い時間内だった。14時ごろ、下山。

帰宅は16時を回る前。悪天候からしっかり逃げ切りつつ、目的のラッセルもでき、初のお目付け役のいない山行も貫徹で来た良いラッセル山行だった。おにいさんにも会えたし。

心地よい疲れが、充実感だ。帰りは七里岩ラインを使ったが、降雪は里ではまだだったし、除雪が行き届いており、快適だった。

≪今回のまとめ≫
            予想     実際
・天候予想     普通 → 40年に一度の寒波
・降雪量予想    寡雪  → 40cmプラス1週間分
・集合        登山口集合 → 安全圏内の道の駅集合
・登山口      マイナー除雪期待薄 → メジャー除雪期待濃厚
・タイムリミット  13時→11時

・ギア  ワカン  用意せず → 一応用意

≪参考コースタイム≫
5:45 集合 (6:30登山口出発予定)

登りトータル4時間  7:00出発  11時 標高2296付近で下山開始

下山トータル2時間半
11:43 御小屋山分岐 12:30 南沢合流点 12:42 美濃戸 13:20 美濃戸口


 御小屋尾根らしい、目印。このお札の束が随所にある。

御小屋山まではノートレースだった。
 標高をあげるとこんな感じ。八ヶ岳らしい冬景色だ。
 鹿のトレースしかなかったが、美濃戸(南沢)から、入った足跡がその先は続いていた。がっかり。
 森林限界間際。

暴風の日に森林限界以上には行きたくありません。

-17°とこの日は八ヶ岳としては普通の日でしたが、風速11mであっても、足すと

-17° + 11 =体感温度 -28°

です。

八ヶ岳の核心は、気象であると、遭難事例から学びましょう。

ちなみに樹林帯ではインナー手袋しかしていませんでしたが、このあたりでインナー手袋は凍り付きました。

御小屋山が見えていますね。阿弥陀方面は何も見えませんでした。
 最後は徒渉。
 もう下山。

&Nというオーベルジェが出来ていた。

入浴 300円なのだとか!やす~ お食事して帰るとお得ですね~
メニュー おいしそうです!

宿泊は4800円だそうです。山ヤ感覚では高いが、都会感覚では安い!