Tuesday, May 19, 2015

総括の考察

■ 一区切り

いわゆる”本格的”というカッコが付く登山については、ひと通り、必要な大局的視野を得ることができた。

これまでホントに良く死なないでいれたものだ・・・ 危険な人をたくさん見た。つき合わされそうなときもあった。

今は登山にはウンザリ中でもあるし、別のことに取り組みたい、と思っている。

しかし、まとめは必要だ。 良い総括の枠組みが思いつかないので、ブログを辞めるに辞めれないでいる。

終わりはきれいに総括したい。

それで、おおよその骨組み案。粗削りなもの。
  
1)リスクを認知して備える 計画立案  
2)登る資格  
3)ナビゲーションスキル 読図 
4)敗退するスキル  懸垂下降 ギア、ロープワークと支点
5)相手を守るスキル ビレイ スポーツクライミング 確保理論の紹介 べからず集
6)自分を守るスキル クライミング フリークライミング ムーブの習得
7)レスキュー 救急救命、ビーコン

■ 遭難事例からスタート

初心者の一般登山者の頃、最初に調べたのは遭難の記録だった。

だから、雪山をスタートしようとGWの八ヶ岳から始めたが八ヶ岳に初めて行った時には、その時点で、すでに遭難する可能性がある、危険個所をすでに知っていた。つまり核心を知っていたということだ。その備え方も知っていた。

登山は何からスタートするか?と言うと、計画からスタートする。計画はリスクを中心に組み立てる。そのことが分かっていないリスクが分かっていない人は計画の良さが理解できない。

またスタートである計画立案が他人任せな人は、最初から、登山者としての資質がない。

すべては危険の認知からスタートすべきだと思う。登山は危険に自ら近づいて行く活動だからだ。

危険は具体的に何がどう危険なのかを分かっていることがもっとも大切なことだ。そうしなければ避けることができないからだ。

涸沢岳西尾根で遭難死した知人は、去年もそこで遭難があったことを知っていたのだろうか?鬼門と言われていることを知っていたのだろうか?

■ スタートはリスクの認知

あるルートに行きたい、と考えた場合、リスクをきちんと算段することが大事だ。今の時代の登山者に欠けている思考はこれだ。

リスクは色々あるが、一般的には

・天候 
・季節 → 日の長さ
・滑落危険個所 → 登山道そのものの難易度
・ルートのサイズ → 体力的な難易度や時間の管理
・人の有無  → 人里離れていれば、それだけリスクが高い。
・動物の有無 → 熊が出る場合、虫が出る場合など
・本人の性格 

が代表的なリスクだ。

リスクは、”あるなし”だけでなく、具体的な想定が大事だ。

例えば、後立の不帰の険は、リスクがあると言っても一瞬だ。一方、八つ峰キレットのほうは、同じようなリスクがある場所が延々と続くうえ、縦走路の後半に位置していて疲れも出ている状況だ。難易度というのはそういう意味でも全く違う。無頓着な登山者ならば、キレット小屋で十分休息を取る、ということを怠るだろうし、調べない登山者であれば、まったく初めての登山で来たりするだろう。

一方、一般道だし、小屋が近接しているので単独行のリスクは低い。登山届さえ出しておけば、ねん挫しても誰かがすぐ探しに来るだろうし、誰かが必ず通る。そんなところにつるんで行かねばならないほうが注意力散漫になりリスクが高くなる。

縦走の計画ならば、小屋泊かテント泊か?どちらから入るか?という判断が山の性質を決める。甲武信&金峰の奥秩父の縦走は、甲武信からスタートするのと、金峰山からスタートするのでは、ストーリーの成り立ちが違う。したがって難易度も違う。荷を軽くするか、しないかも作戦次第だし、ロングな縦走なら日が長い時期を選ぶという工夫も必要だ。

テント泊の計画であれば、肝はテント地の想定だ。水を担ぐのか担がないかも論点になる。定着か?ヤドカリ式か?それによって難易度は大きく違う。同じ行程であれば、ワンビバークかツービバークかは、大きな違いで、ツービバークを避けたために起った遭難もある。

時間と疲れの管理は重要で、ほとんどの滑落事故は、登りではなく下山中に起る。基本的にはLight&Fastで行くか、Long&Heavyで行くかという二つの方向性から成る。

もちろんだが、そもそも、山行の性質把握が必要だ。

 偵察山行 (何につけてもほとんどの一回目はこれだ) 
 ご褒美山行 
 チャレンジ山行
 
ご褒美山行したいのに、体力的な無理な計画を立てるのは矛盾する。ご褒美山行とチャレンジ山行はミックスできない。

例えば、厳冬期の八ヶ岳で一升瓶を担いで宴会のご褒美山行をしようと言うのは、最初から計画自体がおかしい。二日酔いでチャレンジ山行はしない。厳冬期に山に向かう時点で気を引き締めて行くべきだ。変な人に付き合っても自分が凍傷になってしまう。下手したら救助する羽目になり、それ以上に遭難死させられてしまうかもしれない。

一方、親睦の山の時に、チャレンジ山行のつもりで来られても、「もっとリラックスしなよ」という話になる。必要もない装備をもってきたり、必要なものを省いてきたりすることからも見える。

どっちに転んでも、山を分かっていない、理解不足ということは言える。

これらのことは、一般登山者の時にマスターしてしかるべきで、そのためには一般登山では、自分で計画を立案して出かけるという経験をきちんと積んできていることが大事だ。

≪一般登山者の時代にマスターしておくべきこと≫
・山時間のマスター 早出早着 
・季節によるリスク 春:日焼け 夏:熱中症 秋:蜂、日の短さ 冬:凍傷
・自分の体力の見極め
・集中力の見極め 下山に事故が多いこと
・地形図を持つこと
・山の概念図の把握 
・空のコンディションの見方 嵩雲、積乱雲、雷、悪天候の予兆を把握するくらいは
・雪のコンディションの見方 雨後の雪、降雪直後の雪、締り雪など観察力

■ 登る資格

上記のような、リスクを認知して、そのリスクを避けるためにどうしたらよいか?という思考をたどらない人は、登山者としての資格が欠ける。怠慢だ。

資質にはリスクに関する認識力以外に、

体力
体重
読図力
観察力
忍耐力

などがある。体力はそもそもコースタイムで歩けないことには、計画ができないこともある。それでも、控えめな登山計画で成り立つ山もある。73歳の男性が前穂北尾根の5、6のコルまで出かけた記録を読んだことがある。体力の不足そのものが、山に行く資格がないとは言えないのだ。資格がないのは、無理な計画を立てる人だ。

体重はそれだけ山で重い荷物を自分に課していることになる、という認識が必要だ。過剰な体重はクライミング要素がある山では、相手に対してリスク要因になる。軽い人より、重い人がぶら下がった方がロープが切れやすくて当然だ。レスキューも大変だろう。

読図力も、かなりの範囲で独学できる力だ。やらないでいる人は怠慢だ。

空や雪、植生の変化、鉈目の見方、踏み跡の見方、花、石、勾配の変化、山では観察力から多くの情報を得ることができる。観察力がないことで不必要なリスクに陥ることも多い。山慣れた人なら気が付く、風の変化に気が付かず悪天候につかまったりだ。動物の足跡は誰が通ったかだけでなく、いつ通ったかも分かれば、どのくらいの大きさなのかもわかる。

そういうものを理解することに喜びを感じる人の方が、そうでない人よりも、登山者としての資質があるのは当然だろう。

こういうことの無理解を”山を分かっていない”と全体的に総称しているようだ。

憧れは登山を充実させる大事な要素だが、それだけで内実が伴わない人が多い。

体力があっても、リスクに対する理解がないとちゃんとした登山者にはなれない。

■ ナビゲーション

ナビゲーションは当然ながら、進路を発見する力。 ルート維持はルートをそれない力。

基本は尾根と沢を使うので、地形図を見て、尾根と沢を理解することは基本中の基本。

ナビゲーションまでは一般登山で培える力だ。

ただ登山道をたどるだけでも、地形図を持って歩き、現在地確認する習慣があればできることだ。

ギア
 ・地形図
 ・エアリア
 ・コンパス
 ・高度計

■ 敗退するスキル

これは、懸垂下降のこと。そのためには、最低限

ギア
 ・カラビナ
 ・ロープ
 ・下降器
技術
  ・結び
  ・支点構築 良い支点の見分け方

についての知識が必要だ。懸垂支点は失敗が許されない支点だ。

ちなみに懸垂下降は最後の手段と言われている。歩いて降りれる場所があれば歩いて降りる方が良い。ただ敗退のためのスキルは持たなくてはいけない。

必要があるかもしれないときは、ジャンピングの装備も一揃い必要。

■ 相手を守るスキル 

ビレイするスキル。クライミングは先天的な才能の有無が関係するが、ビレイは後天的に誰でも習得できるスキルだ。
スポーツクライミングで習得する。このときに確保理論を学ぶべきだ。基本的なべからずを知っているべきだ。

スポーツクライミング
ギア
 ・確保器
 ・シングルロープ
 ・ハーネス
 ・クライミングシューズ
技術
 ・確保
知識
 ・確保理論 墜落係数
 ・ランナウト

■ 自分を守るスキル 

登攀力は自分を守るものであって、それだけで登山が成り立つものではない。体力と同じであって損がないだけ。
ないとリスクに陥る、つまり不可欠な力である、計画立案力や山の観察力、読図力と違い、アウトソーシング可能。

フリークライミング 
・ムーブの習得

■ レスキュー

レスキューは遭難にあってしまってからのことであり、遭難に遭わないスキルより、当然だが優先順位が低くあるべきだ。

避ける努力をしてもなお、避けることができなかった場合の遭難対策、救急救命であり、ビーコン探索だ。

日赤で救急救命講習を受ける
レスキュー講習を受ける
雪崩講習を受ける

こういうものは数年に一回。

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観光客を登山者に育てる仕事・・・最初のツアーで非常識登山者を育てない

2 comments:

  1. Kinnyさんの この記事とは直接関係ないんですけど、↓これ読まはったことあります?
    http://blogs.yahoo.co.jp/gkxyk676/12835025.html

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    1. 私も夫も、三ツ頭には6本アイゼンの時代から出かけて、貧弱な装備で行って、さんざん非常識登山者呼ばわりされたんですよ。 一方必要もない過剰装備で 大したことのない場所を登っている人もたくさん見ます。装備より先にやることあるでしょ、的な。ビーコンはその一例です。

      両方の特徴は、考えない習慣です。多くの人が山から直接メッセージを受け取って、大丈夫だという実感を基に前進する、という基本をないがしろにしていて、それ以外のもの、装備があるから、ビーコンがあるから、経験者と来ているから、ガイドと来ているから、に保証を求めようとしています。

      自ら判断することを放棄している人は、装備がどうであれ、ダメでしょう。 

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