Friday, August 30, 2013

後立山テント泊縦走 記録 その① 崩落の白馬大雪渓


今回のお山は大変良い体験でした。 その詳細です。

≪日程≫
Day1 下山日(遠見尾根) 再入山16時(猿倉~白馬尻小屋) テント泊
Day2 白馬雪渓 ~ 天狗池(天狗小屋) テント泊
Day3 天狗山荘 ~ 五竜山荘 テント泊
Day4 五竜山荘 ~ 冷池山荘 テント泊
DAy5 冷池山荘 ~ 爺ヶ岳 ~ 種池山荘 ~ 柏原新道 ~扇沢 バス&電車で白馬へ。

≪行動時間≫
Day1 2:40 + 1:00 約4時間
Day2 約9時間
Day3 約7時間
Day4 約9時間 核心部
Day5 約5時間 下山日

装備重量: 14~15kg


■ Day1 遠見尾根の下り&猿倉~馬尻

普段とは違うアメリカンでステキな朝食
初日、まずはアルバイトの終了作業のため、遠見尾根の下山です。

山小屋の朝が早いのは当然ですが、5時から始まるお客さんの朝食が済むと、従業員の朝食です。

ここ最近、賄いの朝食は6時半・・・、もっとも早い時刻でした。 …にもかかわらず、終了日に限って、お客さんの朝食がなかなか終わらず、まかないが普段より遅れ、7時半出発…(汗)

せっかくの素晴らしい朝食をいただいたのに残念でした。 

8時にはすっかり掃除も済んでいる、なんて日もあるくらいですから、遅い出発です。

最後だということと、冷凍庫の都合で普段食べられないパンの朝食を用意していただき、感謝感謝でした☆






≪遠見尾根のコースタイムのこと≫

下山では、数人の登山者を追い抜き、10時過ぎに山麓駅着。テレキャビンに乗ります。駅で、支配人おススメのスイカジュース(400円)をいただき、後で食べたい!とアップルパイを持ち帰りました。

下山にかかったタイムは、2時間40分です。この日は、再度別の入山口から入山する予定があるので、少し急ぎ気味です。今回のザック重量は13.2kg。念のため、キャビン駅で計りました。

遠見尾根はエアリアの地図では、標準コースタイム登り6時間下り4時間の道です。これは個人差の大きい、不思議な標準コースタイムです。

初めてこの尾根を下った初回の山旅では、雪渓が残る残雪の道をアイゼンつけて3時間半、2回目は3時間、今回は2時間40分。

登りは、一人で登った時には3時間半、雨&雷雨の中、初心者を含むパーティで登った時は4時間半、でした。

コースタイムと競争する必要は別にありませんが、遠見尾根こそ、技術&体力でコースタイムに差が出る登山道です。

これはたぶん、総合すると、遠見尾根が荒れている、ということなんだろうな…

荒れているというのは、一段一段の段差が大きいのです…歩きやすい道ではありません。

さらに、遠見尾根は、小遠見山、大遠見山、中遠見山、西遠見山、白岳とアップダウンが激しく、稼いだ標高をまた下げながら、上がっていくので、登りも下りも体力が要る道です。

段差が激しい場合、下りは膝に来ますので…膝が弱い人は要注意ですね。

一説には歩荷さんが歩いた道は段差が小さいそうなので…この尾根はあまり歩荷さんが歩いた道ではないのかもしれません。

遠見尾根は後立山の縦走路につながる尾根道で、エスケープルートの一つですが、隣の八方尾根が展望よし、風通しよし、整備良しなのと比べ、樹林帯で展望がなく、風通しも悪く、整備もまばらと難易度が高い尾根です。

植物がキレイな尾根です。冬は積雪量も多い。風は樹林帯のおかげで強くありません。風の日におススメ。

比較的マイナーで利用者の少ないルートなのは、有名な唐松岳、鹿島槍に挟まれて、存在感がイマイチ薄いのもあるかもしれません(笑)

さて、そういうわけで荒れた遠見尾根を多少の急ぎ足で下りましたが、小屋のバイト仲間は1時間40分で下れるそうです…(汗) 

アップダウンが多いので、下りは慎重に行っても、平坦なところ&安全な登りでスピードアップするのがコツのようです。

≪白馬駅周辺≫

早く降りたおかげで、11時には会社で清算などを済ませ、夫に送ってもらったテント泊装備を受け取りました。 行動時間にゆとりが出て、一安心。後は登るだけです。

後立の縦走には白馬駅付近での駐車がおススメです。

下山時に楽、ということで、登山口にある無料駐車場に停めたい誘惑はありますが、縦走の場合はバスを利用せざるを得ない。

すると、バスの発着が集中するのが白馬駅周辺となると、時刻の関係でも一番合理的なのが白馬駅周辺です。始発終点。八方も良い場所です。

今回は、私は駅から徒歩5分の無料駐車場(ハイシーズンは有料)に車を止めました。八十二銀行の横です。裏にドラッグストアやスーパーが隣接しています。食料などの仕入れにピッタリ。八方に止めるとコンビニしかありません。

白馬から猿倉までのバスの時間を調べて行きましたが、1か月分の垢を洗い流すため(笑)、温泉に入りたいため、13時のバスを見送り、14:30の最終バスに乗りました。白馬から猿倉まではバスで30分。15時の入山は、常識的な山時間では最終便です。

温泉は白馬駅から歩ける範囲(10分)に、人気No2のみみずくの湯があります。駅前で割引チケットをもらうと500円から百円引き。

なんだかんだと駅周辺はこのように準備がまとまってできる。ただコンビニはありません。車があるなら、駅前の道路沿いにマックスバリューがあり、同じように、袋飯などを販売している山道具屋、楽ピーさんも使えます。

≪馬尻か?栂池か?≫

今夜は馬尻小屋に行く予定。入山初日の宿泊は、栂池にするか、馬尻かで、最後まで迷いました。

ただ栂池から入ると、最後の下山日にゆとりがなくなり、赤岩尾根でエスケープとなると下山口にバスがないことになってしまう…し、栂池には、テントサイトがありません。

★栂池入山のメリット&デメリット
・ロープウェーで楽々アクセス
・テントサイトがないため、小屋泊。
・下山日の予定がタイトになる。
・ラクラクコース

★白馬尻入山のメリット&デメリット
・1時間の林道歩き
・雪渓のそばで寒い
・テント泊可能
・下山日の行程にゆとりが持てる
・チャレンジコース

結局、ラクラクコースの栂池を後回しにしたのは、山行のテーマがぶれるからです。

難所の岩峰歩きをテーマとすると、馬尻入山に決定です。チャレンジ山行ですね♪ 

チャレンジ山行の場合、本来は針ノ木岳まで行って雪渓で降りたい、という思いがありました。そうすると、雪渓で始まり雪渓で降りれる。

日本最大の雪渓である、白馬の大雪渓で始まり、針ノ木の雪渓で降りるというのは、テーマの一貫性として魅力的です。 

結局、猿倉Inに決まりです。

猿倉には予定通り15時すぎに入り、砂利道の登山道を小1時間歩いて、白馬尻小屋到着です。


余談ですが、猿倉までの林道は一般車も入れますが、バスが通ると、バックで擦れ違いができる箇所まで戻らなくてはなりません。

林道のカーブ道でバックが上手な車はそんなにいないようで、擦れ違いが大変でバスは何度も擦れ違いのため停車しました。バックで林道を走れない車は猿倉まで入らない方が良いかも・・・(^^;)

猿倉荘からの砂利道は雨後のため濡れており、最後15分ほどの登山道も雨水の流路となって岩も濡れていましたが、特に難しいこともない道でした。ずっと沢沿いなので、飲料水の準備は不要です。
猿倉での看板 登山者に注意を促す
≪馬尻小屋へ≫

馬尻小屋
今回、小屋を訪ねる気分で、初対面の場尻小屋のご主人へのお土産として、一応赤ワインを購入しました。

装備を準備していると、結構重い…(汗)

最後まで、テント泊なのだからお土産は要らないかしら…と悩みましたが… 結局歩くのは初日は小一時間だし…と、持って行きました。チーズとワインです。やっぱり酒好きで知られる小屋勤務明けの訪問なので、お酒ですよね(笑)
結果は、持って行って正解。馬尻小屋のご主人はワイン好きのようでした。テント泊で食事だけまかないをいただきました。ありがとうございました。

小屋のご主人は、ヨーロッパでのフリークライミングや本チャンもやっていた本格的な山屋さんの小屋番さんで、楽しい山の話をしてくださり、お酒も入り、楽しく過ごしました。

馬尻小屋は、雪渓の終点にあるので、小屋は建壊しが簡単なように質素なトタンの作りです。ただ生ビール(700円、安い!)も置いてあり、下界に近い小屋の利点を感じさせられます。

ドリップコーヒー(400円)があるのがポイント高し!

テントサイトは小さく、小屋前のみ。この日はテントたったの3張。


小屋前からは雪渓の眺めが秀逸です。


水が豊富な小屋だけに水は無料です。注意点は雪渓からの吹き下ろしで、テント泊だと他のサイトより寒いことです。

私は、うすら寒いな…と思いつつ、軽装でシュラフにもぐりこんでしまい、寝る前に何か着込んだ方が良いと思いつつも、それをサボったがために、のちに寒さで一旦起きることになりました。

シュラフは3シーズン用のモンベルNo3です。冬のアンダーを上下とも一枚重ねて寝たら、少々寒いものの寝れました。反省点は最初から着て寝るべきだったという点です。

衣類の調整はこまめにしないとダメですね。

山では、マメな性格の方がいいみたい・・・。

夜中の2時ごろにあまりの明るさで目覚めたら、月夜で明るく、ヘッドライトが要らないくらいでした。

明日は期待できそう!と、心躍る感じです(^^)

アイゼンの貸し出し

■ Day2 白馬雪渓~天狗山荘 核心は葱平(ねぶかっぴら)

≪白馬雪渓の崩落情報≫


白馬雪渓は、事前に大雨により崩落の情報がありました。 

前々日の22日は稜線の小屋でも大雨、そのため、通行止めになり、23日、24日は通行止めだったようです。


22日は後立一帯で一時間に120㎜の大雨。

余談ですが、日本は災害が多い国なのに、雨量の教育は徹底されておらず、大雨と言うような、あいまいな表現に終始していますが、120ミリの大雨と言えば、大変な豪雨です。 一般に、林道は一時間に50ミリの雨で閉鎖されます。

こちらに気象庁の専門用語の解説がありますのでご参考に… 

何しろ”非常に激しい雨”という一般的な言葉が専門用語であることが、そもそも、誤解の大元のような気がしますが・・・・

それを稜線の小屋では雷がすごかったのです。それでも稜線を歩いて来たツアーがあり、その非常識さに呆れさせられましたが、大雨でも稜線の小屋は流れませんが、土砂災害の危険があるのは、むしろ、沢沿いです。

≪土砂崩落後の雪渓≫

26日早朝の白馬大雪渓は、22日の大雨による土砂の流入による崩落痕でした。

雪渓と言うと、雪の印象が強く忘れがちですが、基本的に谷筋であり、雪崩の巣である=崩落の際は土砂の通り道、です。

通行止めは25日に解除され、崩落痕の比較的安全箇所に赤旗が立っているそうでした。

26日、朝は早立ちする予定で多少寝坊してしまい、5時半出発。雪渓入口に着いたのは6時。

私は26日の早朝に雪渓を通ったわけですが、出来立てほやほやの崩落痕の上を歩かされました(汗)。

アイゼンは必携です。ただ崩落痕の土砂の上ではアイゼンを脱ぐので、着脱が多くなり面倒が増えます。

決して易しい道ではないです。崩落痕だけならまだしも、歩いていると、ところどころで、現在進行形の土砂の崩壊する音がします(汗)

5月のGWの雪渓で雪上訓練するときは、どんな小さな雪崩でも立ち止まって雪の落ち着くのを見届けてから、行動を継続するものですが…、見ていないと「おい、ちゃんと見ていろよ~」と講師陣から注意が入ります。

それと同じことで、私は土砂の崩落が落ち着くのを見届けてから歩きました。 土砂の崩落音に注意を向けている登山者は他にはいなさそうでした(汗) 崩落そのものより、この注意を払っていないということのほうが怖いのです・・・ 

さらに、歩いていると、ササ~ササ~と崩落とは違う音もしたので、獣かと思い、熊よけの声をあげました。熊よけならば、笛を吹くという選択肢もありましたが、笛は振動が大きい。土砂の崩落を誘発したら嫌だし、どうせ熊なら人の声のほうをむしろ嫌います…

ところがこれは、熊やサルなどの動物ではなく、後でわかったのですが、クレバスの雪が裂ける音でした(汗)  雪渓には大きなクレバスが。
雪渓入口

これは右側が下り(谷側)です。写真の具合で、分かりづらくすみません。

大量の土砂


雪の上にも石

景色はきれいですが、気を緩めてはいけない・・・ よく見ると左右に崩落だらけ

土砂ですよねぇ

雪ではもはやありません

その通り・・・

休憩時も、そうでないときも頭上注意

雪の道の上に、土砂の流路がある

クレバスもいっぱい・・・ 雨後は危険ですね


ここで悲しげな動物の鳴き声がした・・・ハマって出れないのか?と探したが見当たらず

石、机以上あるよなぁ・・・

キレイではありますが・・・


頭上・・・

特大 雪渓ボルダ―?

晴れて大展望です

かなり急です



もちろん人が乗ったくらいでは崩れるような強度ではない、分厚い雪渓ですが、下に水が流れていることを実感できます(^^;) 裂ける時音がするのだということも知りませんでした。通過時刻は6時から8時なので気温はそう上がっていないはずですが・・・。

さらに、雪渓(つまり土砂は雪の下にあるはず…)なのに、角の取れていない真新しい石が雪上に一杯…握りこぶし大から、人の頭のサイズまで…よく見ると、物置小屋ほどもある巨岩も苔や草が付いておらず、これも大雨で流れてきたのではないか…と思わせます。

雪渓歩きの終点は、葱平。そこからは古い崩落痕のガレ場の急登です。

葱平が今回のテント泊縦走で一番バテた場所でした。

初日だったのでまだ装備が重いのもあり、水も馬尻から担いできてしまいました…重さのバランス変化に慣れておらず、雪渓前の普通の登山道でバランスを崩して、片手をついて突き指したくらいです(ーー;)。

思うに、空荷で歩く歩き方と重い装備付の歩き方は多少バランスのとり方が違うんですよね。技術の問題だけでなく、初日のテント泊で少し寒くて寝れなかった、という体力の問題や晴れたので、暑さでバテという問題もあったかもしれません。

こうした崩落痕を歩いていると、だんだん自分の足音がなくなります。というのも、元が崩落痕。つまり、すべて動く石です。なので乱暴に足を置くとさらに崩落を悪化させます。足音がしないくらい、そっと足を置き、登ることになります。

この、足音をさせないで登るということ…は、登山においては、下りでも登りでも重要なスキルのひとつではないか?と思います。

白馬の頂上小屋が谷間に見えてから、結構、距離があり、足腰というよりも、むしろ肩に重さが食い込み始め、担ぐのが嫌になったころ、やっとこさで頂上小屋に到着。10時すぎです。

トータル4時間半で、標準コースタイム通りでした。


アイスケーキセット750円
ついてすぐに、下界の蕎麦屋で買い求め、本来朝食にするはずだった紫米のいなりずしとケーキセット(750円)でランチにしました。 

水はせっかく担ぎ上げたものの・・・雨の影響か、馬尻小屋の水場の蛇口からくんだのに白濁しており、山頂小屋で放棄。なんのために担ぎ上げたのでしょう(笑)

とりあえず、偵察ということで、白馬山荘までピストンし、山荘が豪華な小屋であることを確認してから、山荘から15分の白馬岳山頂は次回夫と来た時のために取っておくこととし、杓子岳を目指すことにしました。 この日は行程が長く、午後から多少崩れる傾向にあったので。

≪情報≫
・白馬~猿倉バス 980円 30分
・白馬場尻小屋 テント泊 500円 水無料、アイゼン貸出アリ
・白馬頂上小屋 ケーキセット 750円
・白馬山荘 濃縮還元 オレンジジュース 450円


≪反省点≫

・寝るときは早めに厚着しよう

≪追記≫
初のテント泊縦走4泊五日 後立山 白馬雪渓~爺ヶ岳(柏原新道)
http://stps2snwmt.blogspot.jp/2013/08/blog-post_29.html

その① 崩落の白馬大雪渓
http://stps2snwmt.blogspot.jp/2013/08/blog-post_30.html

その② 稜線散歩&天狗山荘
http://stps2snwmt.blogspot.jp/2013/08/blog-post_1279.html

その③ 不帰ノ嶮 ~ 唐松岳 ~ 五竜山荘
http://stps2snwmt.blogspot.jp/2013/08/blog-post_4942.html


その④ 核心部 八峰キレット および下山日
http://stps2snwmt.blogspot.jp/2013/09/blog-post.html

白馬大雪渓情報










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