Monday, July 1, 2013

講習会 夏山の基礎知識 備忘録

とりあえず、内容をまとめておきます。

■ 講義1 遭難事例から学ぶこと

これは長野県警の山岳救助隊の副隊長さんが参加してくれた貴重な講演でした。漫画『岳』の三歩さんは特別隊員なのだと(笑) 岳パワーは、すごいですね。

・転倒は高齢者が多い。単なるつまづきから転倒し、骨折に至る。
・持病発病は高齢者に多い。高血圧、糖尿病、肥満は、リスクが高い。
・40代以上の遭難者が全体の87%。60代以上が半数。団塊の世代がリスクが高い
・遭難は増加傾向、去年は一日2件のペースで発生。
・登山計画書は警察でなくとも周囲の人に渡すのでもよい。
・ヘリには近づかない。吹き下ろしの風がある。
・携帯電話を持つ

基本的には遭難の事例が紹介されたのですが、やはり統計を見ると、中高年が多いのです。

ただ…私は非常に疑問に思うのですが、中高年と言った場合40代を含むのですが、40代は成長曲線のカーブから見ても下り坂には来ていますが、それは30代のピークから見てのこと…体力としては20代や10代と変わりません。そういう世代を60代、70代と一緒にしてしまう統計はどうかと…

事実、40代以上とせず、60代以上とした場合、遭難者の半数が含まれるそうです。圧倒的に中年ではなく高齢者が多いのです…遭難は。そして高齢者は体力に個人差が多い。メンテの差が如実に出るようです。

最も遭難しやすいプロフィールは、昔山をやっていて、体力の過信がある定年退職後に山を再開した60代男性です。トレーニングしないで山に行ってしまうから、昔のコースタイムの意識まま山に行ってしまうから、という理由です。昔山をやっていたと言えば、10~20歳までの学生時代を指すでしょうから、青春期と定年退職後では体力は違って当然ですよね…。

北アでは岩稜帯が多いので、今年からヘルメット着用キャンペーンをするそうです。


■ 講義2 登山の医学

登山の世界では有名な、相澤病院の救急科医長さんが講演され、これもとても楽しい講演でした。

長野県でおひさまクリニックという診療所を開業しておられるので、そちらに出かけていくと、登山者の悩みにあった診療が得られるかもしれません。

・長野県の山岳エリアでの事故は3年連続UP中
・夏山のリスク 山岳外傷、高山病、熱中症、紫外線、低体温症、疲労、
・外傷では、救急救命措置が重要。頸椎保護、気道確保、胸部外傷処置、ショックへの対処、意識、体温管理
・急性高山病は、低酸素状態に置かれれば6時間以上経過するとだれでもかかる。ClimbHigh Sleep Low
・水分補給不足による脱水で、心筋梗塞などを引き起こす。

取るべき水分量=5×体重 ×行動時間 
 例: 体重50kg6時間行動 5×50×6H= 1500mlの飲料水

・基礎疾患(糖尿、ぜんそく、高血圧)がある人はリスクが高い
・紫外線は白内障をなどのリスクが高まる
・低体温症の場合は、加温には細心の注意が必要であり、急に四肢を加温すると冷たい血が心臓に行って逆効果になることがある。心臓マッサージをあきらめないことが重要。

≪傷病者評価の基礎≫ ←これは日赤の救急救命を受けている人しか知らないと思いました。
1)周囲の安全確認 自分の安全確保
2)気道確保 頸椎保護
3)呼吸の確認
4)脈の確認
5)意識の確認
6)体温の確認
7)骨折

意識がない外傷は脳損傷の恐れがある
・気道が詰まっている場合は、一般の人ができることは少ない。気道をなんとしても確保するしかない。
気胸は1分を争う
・外傷性ショック 一刻も早く病院へ運ぶ。処置さえ早ければ歩いて帰れる。
骨折は体温の維持も重要。

・補給: 行動中のエネルギー消費量=5×体重×行動時間 
 例: 体重50kg6時間行動 5×50×6H= 1500カロリー

・7~8割補給すればよい。2時間に一回。
・補給を怠ると翌日がつらくなる
・小児は飢餓に弱く、脱水に陥りやすい。

■ 講義4 地図読み

これは実習が入り、とてもよかったのですが、なかなかできない人が多かったです。

・地図記号の確認
・磁北線の書き方
・地形の把握
・概念図
・コースタイム予想法
・進行方向の同定
・コンパスによる進行方向の同定
・現在地の同定

実際に山行予定の山を題材にして、やるのがポイントかと思いました。

■ 講義5 夏山気象

これも、小規模な実験が入り、雲が出来る機序が分かり良かったです。

・トムラウシ遭難事例を参加者の目線で状況判断
・気温の予想の仕方: 標高100m で 0.6度下がる 標高差2000なら、登山口で20℃のときは、山頂は8℃。
秒速1mでー1℃ というのは、実際の気温が下がるわけでなく、体感温度(体熱を奪う割合)が同じということ。
 10度でも風速20mあれば、-10度にいるのと同じ割合で体熱が奪われる。
標高1500mの天気を知りたい時は、850HPAの高層天気図、標高3000の時は、700hPAの高層天気図

≪大気が不安定になりやすい時≫
・強い日射で地表面が過熱されるとき
・湿った空気が移動してきて、上昇空気塊となる時
・上空に寒気が流れ込んだとき

・天気図から風向きを知ることができる
・高気圧と低気圧を塗り分ける 南風と北風を塗り分ける
・自分の天気予報を書いてみることが一番勉強になる
・夏山の天気は「鯨の尾」に注目することがポイント
夏型が弱まると山では、キリ、雨、雷雨となる

≪役立つ情報サイト≫
ウェザーニュース http://weathernews.jp/index.html
専門天気図(北海道放送)http://www.hbc.co.jp/pro-weather/

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